日本のODAは、戦後にアジア諸国への補償という形ではじまり、今でも地理的に近いアジア地域の援助が多いですが世界中に広がっています。
バブリーで景気のいい時は世界一のドナーであったりもしましたが、現在でも十分その存在感を示しています。
2001年にFDNYの多くの仲間を失ったアメリカ同時多発テロ以降、他の先進国は「貧困=テロ」という考えでODA予算を増加させています。
こうした世界的な情勢や国内の超長期の不景気が、日本のODA実績を相対的に低下さています。
今回は消防士とそんなODAの関係についての記事になります。
そもそも【ODA】って?
まずは、なんとなくわかっている様でわかっていないODA。外務省やJICAのHPには詳細に書かれていますがボリュームが結構あるので、簡単にまとめます。
ODAと書いてもちろん「オダ」とは読まず普通にオーディーエーと読みます。
開発途上国の生活基盤の開発を支援するため、政府をはじめ、国際機関、NGO、民間企業などさまざまな組織や団体が経済協力を行っていますが、これらのうち、政府が開発途上国に行う資金や技術の協力を政府開発援助、英語の頭文字をとってODAといいます。
つまり資金の出所を遡れば日本政府のお財布から出てる開発途上国の援助です。
【ODA】は二種類
ODAには大きく分けると二種類あり、開発途上国を直接支援する二国間援助と国際機関を通じて支援する多国間援助というものがあります。
今回は二国間援助についてですが、両者の違いは下を参照してください。
二国間援助
二国間援助は「政府貸付」と「贈与」の方法があります。
政府貸付
途上国が返済することを前提とした「有償資金協力」のことで、かなり低金利ですが返済義務があるため途上国の中でも比較的所得水準の高い国に対して実施されることが多い手法です。
後述の無償資金協力と比較して大規模な支援を行いやすく、途上国の経済社会開発に不可欠なインフラ建設等の支援に効果的です。貸付方法としては次の2つがあります。
- 経済発展や福祉の向上を促すための資金を円で貸し付ける「円借款」
- 日本又は対象国や地域の法人等に対して開発事業の実施に必要な資金を融資(貸し付け)・出資(将来的な利益を見込んで資金を援助)する「海外投資」
「贈与」
途上国に対して無償で資金提供される協力のことで、「無償資金協力」と「技術協力」があります。上記の「政府貸付」とは違い、返済義務がないため途上国の中でも所得水準が低い国に対して実施されることが多い手法です。
二国間援助のプロセス
二国間援助(有償資金協力、無償資金協力、技術協力)は、まず、開発途上国からの要請⇒現地の大使館やJICA等の関係者の検討からスタートし、その後のプロセスは、援助形態によって異なります。
「無償資金協力」及び「有償資金協力」
調査案件の選定、外部有識者から構成される開発協力適正会議における協議、協力準備調査の実施、財務当局との議論等を経て閣議決定された後、援助の実施についての国際約束を先方政府と締結し事業を実施。
と、なんかけっこうややこしいプロセスを踏んでからの実施になります。
「技術協力」
採択案件の選定後、援助の実施についての国際約束を先方政府と締結し、その後実施機関であるJICAが事業の詳細計画を策定するための調査を実施して事業の実施。
「技術支援」は閣議決定は不必要となります。
「消防関係者」は、このうち「無償資金協力」と「技術協力」に直接的に絡めるので、次はその内容についてです。
無償資金協力と技術協力の目的
「無償資金協力」
目的⇒主として開発途上地域の開発
防災をテーマに災害対応力の向上のため資金提供し消防車を購入した場合を例にすると、下図のような流れになります。
詳細な調査を伴う施設の建設や機材の調達を購入した資機材取扱いの部分はソフトコンポーネントになり技術指導が付く場合があります。
ソフトコンポーネントは名目上はコンサルタントによる技術指導ですが、消防案件の場合は日本の消防関係者をコンサルタント要員の一員として派遣して技術指導を行います。
- 無償資金協力で消防車購入⇒コンサルタント会社
- 購入した消防車の取り扱い⇒メーカーエンジニア
- 実戦での活用方法⇒消防関係者
最近の事例では2023年6月30日、ジャマイカの首都キングストンに警察車両(パトカー及び救急車)供与のための無償資金協力「経済社会開発計画」(供与額計4億円)に関する書簡の署名・交換が行われました。
技術協力
目的⇒開発途上地域の開発&同地域の経済社会開発の担い手となる「人材の育成」
技術協力は多様な形態があり、実施主体も政府ベースやら海外進出企業関連やら、NGOの国際協力活動などいろいろです。
政府ベースの技術協力
- 技術研修員の受入れ
- 専門家の派遣
- 青年海外協力隊の派遣
国際協力機構(JICA)が中核でその「技術協力」には,開発途上国の技術者や行政官等に対する研修の実施,専門的な技術や知識を持つ専門家の派遣はもちろん、協力に必要となる機材の供与もあります。
「無償資金協力」の場合は機材の供与に必要な技術指導ですが、こちらは目的が人材育成が置かれており、機材供与はそれに付帯するって感じです。
なにがちゃうねん?と思いますが、たぶん金額の桁が変わると思います。
専門家派遣・研修員受入・機材供与の3つ組合せることで効果アップを狙ったものは「技術協力プロジェクト」として一つのセットになります。
個別の技術協力の一つである専門家派遣でわかりやすいのは、海外における大規模な災害時に派遣される「国際緊急援助隊」です。
こんな感じで、「有償資金協力」は無理ですが、「無償資金協力」と「技術協力」なら消防関係者もODAに関与するチャンスは十分あります。
ここまでは、主体が政府や資金力のある大企業ベースで動くので、お金もハンパないです。
しかしこれらの方法では、時間がかかりすぎたり、拾え切れない部分がどうしても出てきて根っこの部分まで手が届かない場合があります。
草の根無償
そんなかゆいところにも手が届く支援、それが草の根無償と言われている(正式名称:草の根・人間の安全保障無償資金協力)で、比較的小規模な事業(供与限度額は、原則1,000万円以下、しか~し条件次第で1億円!)に資金を供与するものです。
資金は少なめですが、これがダイレクトに地域の住民に届きやすくて手続き的にも難しくない(他と比較するとですが)、機動性があるスピーディーな方法で、生命の危機や厳しい生活状況にさらされている人を守るために行える支援方法です。
例えば、交通事故の負傷者を搬送する手段がない開発途上国のある地域に、払い下げの救急車を1台購入して送り、維持管理方法を伝えるだけで負傷者が医師に管理下に置かれるまでの時間が大幅に短縮され助かる命が助かる仕組みができますが、「草の根無償」では整備と輸送の費用を支援してくれています。
この制度は、日本政府も積極的に推進しており、対象団体が開発途上国で活動するNGO、地方公共団体、教育機関、医療機関等の非営利団体なので私が所属する【日本国際救急救助技術支援会:JPR】もコロナの終息を待って積極的に活用し、活動の幅を広げていく方向です。
ノン・プロジェクト無償
今回はODAのお話なので、ついでに「ノン・プロジェクト無償」についても簡単に書いておきます。
マジで金欠で大ピンチな開発途上国に対し、経済の基本構造などを「なるはや」で改善できるように支援することを目的とした無償資金協力です。
通常の無償資金協力はプロジェクト方式で動きますが、これは特定のプロジェクトを目的とした協力ではないのでプロジェクトではないよ~、ノン・プロジェクトだよ~ってことで「ノン・プロジェクト無償」とよばれています。なるはやだけど資金協力額は少なくなります。
まとめ
ほぼ、ODAの言葉の説明になって消防との関りはちょろっとだけになってしまいましたが、なんとなくでも消防関係者も国際協力をする気があれば参加可能という仕組みが日本にあることがわかっていただいければ幸いです。
また、ODAはそのまま日本の高品質な製品や技術の輸出でもあるので、日本経済の発展にも大きく寄与できる仕組みになっています。
もし今後、この様な活動に参加したいのであれば一度【日本国際救急救助技術支援会:JPR】に参加するのも一つの方法になります。と最後は宣伝で今日はおしまいです。
コメント