【東南アジアのプレホスピタル事情】フィリピン共和国編

JPR

フィリピン共和国編

基礎知識

  • 面積約30万平方キロメートル(日本の約8割で7,641の島々で構成)
  • 人口約1億904万人(2020年フィリピン国勢調査)
  • 民族マレー系が主体で、ほかに中国系、スペイン系及び少数民族
  • 宗教ASEAN唯一のキリスト教国で83%がカトリック、その他のキリスト教が10%、イスラム教は5%
https://gentosha-go.com/articles/-/24518

救急医療サービスの現状

救急医療は1997年に制定された法律で、救急や重症患者に対する適切な初期治療や支援の実施を拒否した病院や診療所を罰するとされている。

フィリピンには約1800の病院があり、うち721病院(40%)が公立病院で70病院が保健省管轄病院
である。

保健省によると下の表のとおり全ての国立及び地方病院には救急部が設置され、全ての保健省管轄病院(第 3 次総合病院)では外傷診療を行っている。しかし、脳外科手術を実施できるのは国立病院2病院のみである。

     種 別        病 院 数      救 急 部 の 数   
国立病院(National Hospital)7272
地方病院(Regional Hospital)5252
救急部の数
セントルークスメディカルセンター
島尻消防組合よりフィリピンに寄贈された救急車両

フィリピンにおいては民間セクターが救急に対応できる適切な機材を備えているため、主にそれらが救急医療を提供していると考えられる。

その反面、多くの公立の保健施設(特に州において)は救急車、除細動器や人工呼吸器といった基礎的な機材が不足している状況にある。

https://airgurus.ph/2019/02/10/ground-ambulance-service-philippines/
https://www.listsclub.com/hospitals-in-philippines/

救急医療サービスの現状

フィリピンでは国家レベルでの組織的な救急搬送サービスは存在せず、公的・民間機関、慈善団体といった多数の機関が救急サービスを提供しており、それぞれ通報する番号が異なっている。

   組 織    電 話 番 号  
内務自治省(DILG) 117(警察、消防、救急車)
保健省-HEMB オペレーションセンター711-1001 ~ 02
Marikina 161
Davao 991
フィリピン赤十字 143
https://openjicareport.jica.go.jp/pdf/12237376.pdf

救急サービスの標準化やルール作りが行われていないため、サービスの提供状況や従事者の技術レベル、機材の質、レスポンスタイムなどは組織ごとに異なっている。

*2016年8月から全国共通で緊急通報用電話番号(警察・消防・救急)として911番に統一しています。

内務自治省消防局

内務自治省消防局は病院前救護を実施しており、90台の救急車を所有しているとしているが、2000年以前に購入したため故障していたり、古すぎて修理することが困難な救急車が含まれているため実際の稼働率は不明で、稼働している救急車も無線機などの通信機材は1998年以降ほとんど更新されていないため、通信に支障をきたしている。

フィリピン赤十字社

フィリピン赤十字社は救急車を130台所有しており、そのサービスは災害時には無料であるが基本的には有料で利用者には最低限の費用(ガソリン代と維持管理費)を請求しており、救急隊員と運転手が乗車する。

人材

フィリピンでは救急医は専門医として認められており、Philippine Board of Emergency Medicine により認定を受けている。

看護師に関しては、2012年に保健省は外傷・救急看護を含む看護師認定プログラム(nurse certificate program)を開始している

フィリピンには救急救命士(EMT)の研修を受けた医療従事者が存在する。しかしながら、EMTを専
門職として制度化するような働きかけが行われてきたものの、未だ専門職としては認められていない。

https://ems247.wordpress.com/2011/03/01/philippine-society-of-emergency-medical-technician/
https://www.facebook.com/photo/?fbid=3025667817504011&set=pcb.3025668250837301

継続教育

継続教育・研修は、病院、保健危機管理局及び国内・国外のパートナーにより実施されている。

保健危機管理局は、パートナーと共同し、救急医学及びEMS分野における様々な研修を実施するとともに研修モジュールを開発し、病院に配布している。

保健危機管理局は必要な予算を各病院に配分して一次救命処置研修(16 時間)は医療機関に勤務する全職員に義務づけている。

二次救命処置研修及び二次小児救命処置(PALS)研修は各病院で実施されている。            

フィリピン赤十字社は、応急処置、一次救命処置-心肺蘇生法(BLS-CPR)など EMS 関連の研修を実施しているが、これらの人材に対する研修に対しても保健危機管理局から予算が配分されている。

https://redcross.org.ph/tag/basic-life-support/

*本記事は「ASEAN 災害医療・救急医療にかかる情報収集・確認調査ファイナルレポート」を参考に作成しています。

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