ラオス人民民主共和国編
基礎知識
- 面積24万平方キロメートル(日本の本州の面積とほぼ同じ)
- 人口約733.8万人(2021年)(埼玉県とほぼ同じ)
- 宗教仏教
- 1949年、仏連合の枠内での独立。1953年10月22日、仏・ラオス条約により完全独立。インドシナ情勢急変に伴って、1975年12月、ラオス人民民主共和国成立。人民民主共和制
救急搬送システム
ラオスの救急搬送制度は始まってまだ日が浅く、Mittaphab病院が救急病院モデル病院として指定されている。
Mittaphab病院の救急部門は365日24時間運営されており、医師4 名(集中治療医3名、整形外科医1 名)、看護師17名及び研修医が配置されている。
Mittaphab病院には7台の救急車が配置されており、3台は災害対応用、4台がEMS用。
ラオス保健省によると病院を中央、地域、県、郡の種別に区分し、その種別ごとの救急部門数は以下の通りである。
- 中央病院3(Mahosot、Mittaphab、Setthathirat)
- 地域病院3
- 県病院14
- 郡病院130
1990 年代までは組織的な病院前救護サービスは存在しなかったが、2010 年代に道路網やインフラの向
上により救急搬送体制が改善している。
2011 年にはビエンチャン市保健局の下、全国を対象にした救急車センターが開設され、現在は同センターの所管はMittaphab病院に移管されている。
ビエンチャンにおいて救急車サービスを提供している組織はMittaphab病院、ラオス赤十字社及び
Foundation for assisting poor people of Lao PDR rescueの3組織存在するが、組織間の調整は行われていない。(レポートソースは2015年であるが、2023年の情報では4組織)
Mittaphab病院救急隊
Mittaphab病院にはEMS用の救急車は4台で運転手は4名配置され、レベル1~3に応じて乗組みを変える。
- レベル1は応急処置を行うボランティアと運転手の2名
- レベル2は看護師と運転手の2名
- レベル3は医師、看護師及び運転手の3名
なおレベル3のサービスを提供できる救急車は 1 台しかないため、国際会議の様な特別な機会にしか稼働できない。
コールセンター(1195番)は病院内に開設されているが、2015年の調査時開設されているのは1回線のみで十分に機能していない。
この救急車利用は有料で1 km あたり10,000 LAK(約70円:2024/1現在)ある。
ラオス赤十字社救急隊
ラオス赤十字社は2012年にビエンチャンの4つの郡を対象に救急車サービスをパイロット事業として
開始した。
ラオス赤十字社は救急車を2台配備し、利用は無料で提供されており運営費は完全に民間企業などからの寄付金で賄われている。
救急車にはボランティア4名と運転手が乗車する。救急車チームは必要に応じて応急処置を行い、傷病者を近くの病院へ搬送する。
救急ボランティアの総勢は65名である。
その他
非常に限定的ではあるが、県病院の一部やタイプA郡(麻酔を伴う外科手術の実施が可能:18病院)病院の大半、タイプB郡(小手術のみ可能:109病院)病院の一部においても救急車サービスが提供されている
救急医療機関人材育成
救急医療・集中治療・麻酔の専門教育を受けた医師は存在するものの、救急医は専門医として認めら
れておらず、認証制度は存在しない。
就業前教育
保健科学大学は医学教育を行うラオス唯一の大学で、当該大学のカリキュラムに救急医学は独立した
科目として設定されていない。
学部レベルでは、5年次の学生が救急部門/集中治療室(ICU)での1か月の研修の際にファーストレスポンダーとしての研修(1 週間)を行い、そこでCPR、骨折の固定処置、患者の搬送方法などの実践を学ぶ程度である。
大学院レベルでは、麻酔・集中治療・救急医療を一つのコースとして実施してきたが、現在、大学ではそれぞれを個別に実施することを計画し、救急医療に関しては、2016年9月からの新コースの開始を目指していた。(現在は不明)
継続教育(CPD)
保健人材に対する救急医学やEMSに関する継続教育は主に病院やドナーにより実施されている。
例えば、Mittaphab 病院は看護師向けの応急処置とCPRの研修を実施。
同病院は人員の能力向上とサービスの質向上のため、国際パートナーと技術支援に係る覚書を締結している。
救急医学領域では、仏国のパリ・アメリカンホスピタル内に設立された組織である MUSE が病院職員の研修支援などを行っている。
まとめ
- EMSの整備はまだ初期段階にあると考えられ、政策や法制度の支援、実施レベルにおける技術基準やガイドラインの制定などに取り組んでいる状況である。
- 救急搬送サービスについては、ビエンチャン及びその周辺地域における交通事故の増加によるニーズの高まりに応じて、様々な組織が提供を始めているが、サービスの質や資機材等が適切でなく、搬送される傷病者の安全が確保されない可能性があることが懸念されている。
- まずは、EMSを担う医療・非医療人材を育成するとともに、これら救急搬送サービスについて、適切なモニタリング及び監督制度を整備することが重要になる。
*本記事は「ASEAN 災害医療・救急医療にかかる情報収集・確認調査ファイナルレポート」を参考に作成しています。
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