【ホットトレーニング】

消火方法 
https://www.jpl.nasa.gov/news/ai-could-be-a-firefighters-guardian-angel

今回はリアル消防士の方には退屈な内容ですが、そうではない方には消防士はこんな訓練もしてるよ~って内容です。

はじめてホットトレーニングって聞く方には「熱さに耐える訓練?」と思うかもですが、まあ確かに結構熱い訓練ではあります。

訓練内容を簡単に言うと、室内の収容物などの可燃性物質が発火点に達し、急速かつ激しい火災が発生するときに発生するフラッシュオーバー現象を消防士が実際に体験するためにデザインされたトレーニングです。

日本ではホットトレーニングという名称ですが、海外ではHot Fire trainingとFlash over trainingは別もので目的が明確に違います。

Hot fire training:ホットファイアトレーニング

Hot fire trainingは実際の火災状況を再現したトレーニング施設で制御された火災を設定することを含むトレーニングの一種です。

目的は管理された環境でいろんなタイプの火災を再現して消火技術を習熟させたり、消防設備の使用方法や炎上中の建物の中を移動する方法、チームとして消火活動を行う方法を学ぶことです。

全国の消防学校にはこの訓練を実施するための施設があります。

大阪府消防学校の施設
大阪府消防学校の施設

Flash over training:フラッシュオーバートレーニング

Flash over trainingは、より専門的なタイプのHot fire trainingのひとつです。

Hot fire training>Flash over training

目的は、消防士が差し迫ったフラッシュオーバーの兆候を認識し、それを防ぐために適切な行動を取る方法を理解できるようにすることです。

つまりHot fire trainingの中のひとつにFlash over trainingがあるってことです。

それが何故か日本ではホットトレーニングという名前で広がったっていう事?かな?
知らんけど~。

ややこしいので、本記事ではFlash over training=ホットトレーニングとします。

ホットトレーニング

重複しますがホットトレーニングの目的は、消防士がフラッシュオーバーを認識して対応する方法を学ぶことです。

訓練中に消防士は、熱や煙そして炎の急速な拡大等の差し迫ったフラッシュオーバーの警告サインを認識する方法を実体験します。

また、換気や効果的な注水方法など、フラッシュオーバーを防止または抑制するための消火技術を学びます。

フラッシュオーバーは消防士にとって非常に危険で、防火服と呼吸器を着装していても遭遇してしまうと致命的となるため、消防士が潜在的なその兆候を認識して適切に対応する方法を理解することは非常に重要となります。

https://www.youtube.com/watch?v=OEz70hoxMsI フラッシュオーバー映像

ホットトレーニングはこうして生まれた

1960年代には既にフラッシュオーバーが火災現場で重大な危険として認識されていました。

1970 年代になりフラッシュオーバーへの包括的なアプローチが開発がスタート。

そして、ついに1980年代にスウェーデンの消防士により「フラッシュオーバーコンテナ」が考案されフラッシュオーバーを簡単かつ効率的に再現させるシステムが完成し、火災時の炎の思考や習性を体験可能になりました。

https://firetrainingstructures.com/flashover-simulator-2/

現在、その制御された環境で実際のフラッシュオーバーを模擬体験することで、フラッシュオーバーの発生を防ぐ方法、フラッシュオーバーが発生した場合にするべき活動を学んでいます。

以前は、炎に直接大量の水をかけることで消火するよう訓練されていましたが、この方法では高温になった水蒸気が室内に充満し、室温が一気に上昇することが訓練で体験できます。

逆に具体的には部屋を一つの単位として直接炎に注水するのではなく、天井などに散発的に放水し部屋の温度をコントロール(冷却)することで、フラッシュオーバーの発生を防ぎ炎を制御することができることも再現できます。

そのため放水に使用する筒先もミスト放水できるタイプが普及しています。

https://www.youtube.com/watch?v=49UxGr2Bkz0

私が消防士になった1980年には存在しない訓練でした。当時は実際の現場で室内に黄色くなった煙がだんだん濃くなって、ぶ厚くなってきたらそろそろヤバイって感じで実戦で覚えるしかなかったので、いろんな消火方法などを試すことは不可能でした。

消防士的には「フラッシュオーバーコンテナ」はノーベル賞に消防部門があれば間違いなく取ってるぐらいの発明です。

ホットトレーニングはインストラクターが重要

「フラッシュオーバーコンテナ」を使用し効果的にホットトレーニングを実施するには、インストラクターのスキルも大きな要素の一つです。

もし、インストラクターにスキルや知識が十分でない場合は、当たり前ですがフラッシュオーバーを再現していて炎や高温、酸素欠乏の状態になるわけですから非常に危険が危ない訓練になります。

どんな分野でも同じですが、教育は常に動的で時間の経過とともにブラッシュアップを繰り返し発達する必要があります。

開発された1980年代と今では室内の収容物や素材、防火服の耐火性も変化していますのでフラッシュオーバーに対する攻め方、守り方も今後その時代に応じて変わっていくと思います。

「フラッシュオーバーコンテナ」

実際の「フラッシュオーバーコンテナ」はこんなんです。

https://www.fireengineering.comより引用
https://www.fireengineering.comより引用
https://jfe-project-one.co.jp/buisiness/others.htmlより

まとめ

  • 日本ではホットトレーニング=フラッシュオーバートレーニング
  • フラッシュオーバーの発生機序を理解すれば基本的にはコントロール可能
  • ホットトレーニングはフラッシュオーバーを経験できる非常に効果的なトレーニング

実際の現場では、一気に勝負をかけるかフラッシュオーバーを警戒した活動にするかの戦術判断は現場の状況で変わります。

屋外から大量放水で消火しているのは日本ぐらいと書いているサイトもありますが、それはその瞬間だけの画像だけで判断している一般の方が書いていると思います。

また、トレーニングで得た知識や技術は非常に有益であることは間違いありませんが、それを現場でどう生かすかは現場でしか得ることができない感性も非常に重要です。

多くの現役の消防士の方たちがフラシュオーバーやバックドラフトの違いや攻略方法をブログや動画でもっと詳しくアップされていますので、そちらもできるだけ多く観ることをお勧めします。

しかし、いくら知識を得ても現場では想像を超えた現象が起こることがあります。まるでウイルスが進化するように炎も進化しているように感じます。

2020年7月に発生した静岡県吉田町の工場火災では防火服を装備していない警察官も内部に侵入できる状態までになっていましたが、結果的には警察官と消防士の計4名が職に殉じました。

バックドラフト?フラシュオーバー?気相爆発?それらの複合?

気相爆発:燃焼の直前の形態が気体の燃焼現象によるもので、燃焼の起こるときの周囲の条件等により、火炎が伝播するだけで燃焼が終わる場合もあるが、圧力上昇を伴い爆発を起こすと気相爆発となる。

訓練で得た知識や技術を基本とし規律を守った活動を行いつつ、災害現場で「何かがおかしい」と感じれば「自分を守り、隊を守る活動」にシフトすることも一つの戦術として重要です。

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