【ファーストレスポンダー】

バイスタンダー

【バイスタンダー】と【ファーストレスポンダー】の両者は緊急事態で重要な役割を果たしますが、それらの間にはいくつかの重要な違いがあります。

今回は日本ではまだあまり普及していない【ファーストレスポンダー】の考え方についてです。

まず【バイスタンダー】と【ファーストレスポンダー】の違いです。

バイスタンダー

バイスタンダーとは、なんらかの緊急事態または危険な状況を目撃、若しくは偶然その場所に居合わせた人で、対象に対する関与は自発的であり現場に居合わせた人なら誰でもバイスタンダーになり得ます。

そのためバイスタンダーは、応急手当をしたり自分自身や対象者を危害から守るために必要な知識や資器材を持っていない可能性があります。

ファーストレスポンダー

ファーストレスポンダーとは、緊急時に救急隊等が到着する前に現場に駆け付けて対応する人物で、通報者やバイスタンダーと救急隊の間の救命の連鎖を繋ぐ重要な存在で、目標は負傷者や病気の人に初期のケアを提供し、救急隊等が到着するまで状態を改善もしくは安定させることです。

具体的には情報収集などの状況評価やCPR の実施、出血の管理、他の応急処置の実施、医療施設への患者の搬送の支援が含まれる場合もあります。

そのためファーストレスポンダーは、最新の緊急対応技術の維持、継続的なトレーニングおよび教育プログラムへの参加も必要です。

日本では、警察官や消防士、救急隊員、ドクターカーなどの訓練を受けた職業的組織的ものを指す場合が多いですが、海外ではその様な職種で公務以外の非番日にボランティアとして活動しています。

バイスタンダーは状況に関与するかどうかを選択できますが、海外ではファーストレスポンダーは緊急事態に対応することが法律で義務付けられている場合もあります。

現場に居なくてもファーストレスポンダー?

情報収集や応急処置の指示は現場にいなくてもファーストレスポンダーとして活躍している人たちも存在します。

それは緊急通報の受信者であるオペレーターです。

日本では、119番や110番の通信指令室の係員になります。アメリカではTVドラマでよく目にする911オペレーターです。

通信指令室の係員や911オペレーターは、緊急通報を受けて適切な緊急対応をする訓練を受けた専門家です。

彼らの仕事は、状況を迅速に評価し、情報を収集し、発信者に指示を与えると同時に、警察官、消防士、救急隊員などの緊急対応者と調整することですのでファーストレスポンダーとして重要な任務を遂行します。

以下は彼らの典型的なタスクと責任の一部です。

  • 緊急通報への応答: 事故、犯罪、火災、急病およびその他の緊急事態に関連するものを含む緊急通報に応答する責任があります。
  • 情報の収集: 発信者から情報を迅速に収集して、状況を評価する必要があります。これには発生場所、事態の緊急度、および現場に駆け付ける対応部隊に必要な追加の詳細情報の聴取も含まれます。
  • 指示の提供: 対応部隊が現場に到着するまで必要な応急処置や発信者自身及び対象者の安全確保ができるように、発信者に指示を与える必要があります。
  • 対応部隊の派遣: 警察、消防、救急隊や関連機関など、必要な対応部隊を決定しその場所に派遣します。
  • コミュニケーションの維持: 対応部隊が現場に到着するまでの間、必要に応じて発信者とのコミュニケーションを維持し情報収集とサポートを実施します。

この様にファーストレスポンダーとして高いコミュニケーション スキル、素早い思考、精神的なプレッシャーを受ける状況下での冷静な対応が求められます。

ファーストレスポンダーの現状

前述の通り、日本では警察官や消防士、救急隊員、ドクターカーなどの職業的組織的な緊急対応チームとボランティア消防団の確立された緊急対応システムがあります。

しかし、日本には欧米にみられるようなバイスタンダーからファーストレスポンダー、そして職業的組織的な緊急対応チームへ繋ぐシステムはありません。

理由の1つとして考えられるのは、国の緊急対応システムが高度に集中化されているためです。

緊急通報は通常は地方自治体によって組織および管理されており、入電から現場到着するまでの全国平均時間は救急隊で平均9.4分(令和3年)、警察で約8分(令和2年)と高度に発達した公共安全インフラがあるため非政府組織や民間人の関与はほとんどありません。

これは日本の緊急通報対応システムは災害や緊急事態への対応において効果的であるといえるところでもあります。

もう1つの理由は、日本では「よきサマリア人の法」より責任を重視する文化があり、失敗を恐れて近しい人以外の緊急対応において個人が個々の役割を引き受けることに消極的になっている可能性があります。

では、海外はどうでしょうか?

アメリカおよびカナダ

EMR(エマージェンシーメディカルレスポンダー)は救急医療サービス(EMS)における1つの認証レベルとして訓練されており、EMRは「ファーストレスポンダー」「メディカルファーストレスポンダー」に置き換えられ広められつつあり、救急医療における重要な役割の一つを担っています。

広大な土地が広がるカナダや北米において、救急車が到着するまでに時間がかかる場所が多く存在するため救急医療サービスが到着するまでの間に現場に先着し傷病者に必要な処置を実施し安定化するEMRの養成が進んでいます。

カナダにおいては救急医療のシステムである、プライマリケアパラメディック(PCP)、アドバンスドケアパラメディック(ACP)、クリティカルケアパラメディック(CCP)へ繋がる第1歩がEMRであり、救命の連鎖の重要な役割を担っています。

日本においても2018年に一般財団法人 エマージェンシー・メディカル・レスポンダー財団が設立され活動を開始している様です。

イギリス

イギリスでは、ファーストレスポンダーシステムは訓練を受けたボランティアと医療専門家のネットワークがあり、多くの場合は救急車やその他の緊急サービスが到着する前に緊急事態に派遣され、特に救急車の対応時間が長くなる可能性がある地方や遠隔地で、必要な人々に迅速かつ効果的な医療支援を提供するように設計されています。

また、コミュニティファーストレスポンダー (CFR)や赤十字社の応急処置ボランティアなど、いくつかのタイプのファーストレスポンダーが存在するようです。

システムは、国民保健サービス (NHS) の救急車サービスによって調整され、警察や消防などの他の緊急サービスと密接に連携しています。

他のEU諸国

EUのファーストレスポンダーシステムは国によって異なりますが、一般的には、警察、消防、医療対応者などの緊急サービス間の協力により、必要な人に迅速かつ効果的な支援を提供します。

ほとんどのEU諸国では、緊急通報は112などの中央の緊急電話番号に繋がります。この電話番号はアメリカの911オペレーターと同様に状況を評価して適切な対応者を派遣する訓練を受けたオペレーターに発信者を接続します。

一部の国では、ボランティア組織も第一対応者システムで役割を果たす場合があります。 たとえば、ドイツでは、緊急事態を支援するためにボランティアの消防士が呼び出される場合があります。


この様にファーストレスポンダーは、多くの国において命を救う上で重要な役割を果たしており、その勇気や機敏な思考、献身的な姿勢は広く認められ高く評価されています。

日本のファーストレスポンダー

日本ではAED講習の際に発見から通報、そして処置と一連の流れの中で「人とモノを集める」というところで何となくその存在が出てきますが、まだまだ認知度は高くはない存在です。

もし心肺蘇生が必要な場合で、通報者が応急処置ができず近くに人が居ないと9分近く何もできない状態が継続します。

これだけでも十分ヤバいですが、実は救急隊の現場到着時間は傷病者に接触できた時間ではありません。

救急車が現場到着した時点で車内のPCかスマートフォンの現場到着をポチります。ってことは仮に10階建ての集合住宅だとそこから更に少なくとも2、3分は要します。

この時間差を埋めるのがまさにファーストレスポンダーです。

訓練されたファーストレスポンダーであればその隙間を埋めることが可能になり、またバイスタンダーが心肺蘇生実施していた場合でも交代で行うことができるので心肺蘇生の質が担保できます。

バイスタンダー(家族:自助)⇒ファーストレスポンダー(共助)⇒救急隊(公助)ですね。

日本でのファーストレスポンダーの課題?

覚知方法

覚知方法については、アプリで解決できます。通信指令室からファーストレスポンダーとして登録された人の中から現場に近い人にスマートフォンに送信するだけです。

詳細は省きますが、海外では実際もう運用されている物もあります。

出場手段

現場に近い人になるので、ダッシュか自転車でOKです。

個人情報・補償・費用

法整備は現在の消防団に適用しているようなものが必要です。

日本のファーストレスポンダーに最適な集団!

これには消防団の隊員が最適です。

  • 地域密着なので地理を熟知
  • 知らない人が来るより地域の消防団員なら安心
  • 定期的に訓練をしているので応急処置のレベルが高い
  • 公務災害補償・費用弁償の法的根拠がある
  • 機能別消防団員・分団制度がある

などの下地があり、日常から地域における消防防災のリーダーとして、地域に密着し住民の安心と安全を守っています。

また、減る一方の団員数の解消にもつながる可能性もあります。

まとめ

  • ファーストレスポンダーの概念は日本では未成熟
  • 救命率の更なる向上にはファーストレスポンダーは必要
  • 消防団員はファーストレスポンダーとして最適

と、なります。

救急救命士制度や救命救急センターの整備、傷病者の搬送及び受入れの実施基準策定などのテーマは抽象化すると全て同じで「命を助ける」です。

しかしながら、ゆっくりしか進まない救急救命士の処置拡大や搬送実施基準に従っても決まらない搬送先などを見ているとこの問題も。。。って感じです。

経済と同じように、この30年間「命を助ける」力も停滞していて、このままでは救命途上国になる日も遠くない気がします。

「命を助ける」ためにはこんなやり方もOK↓

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