【救急車の搬送先が決まらない】

救急隊

傷病者の搬送及び受入れの実施基準

大阪府HPより

正確には「消防機関による救急業務としての傷病者の搬送及び医療機関による当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施を図るため、傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準」となります。

これは、私が在職中の平成21年5月1日に公布、同年10月30日に施行されました。

各都道府県でシステムの名称が違い大阪府ではORION:Osaka emergency information Research Intelligent Operation Network systemというカッコイイ名前のシステムが運用されており、府内救急告示医療機関は認定基準によりシステムに参画することが義務付けられています。

このシステム導入前には「まもってNET」というシステムが存在しました。

大阪府HPより

1.緊急度が高い
2.三次救急医療機関への搬送適応症例では無い
3.救急車内収容後の現場滞在時間30分以上又は照会5件以上

「まもってNET」以上の搬送困難事例に応需していましたが、現在はORIONに統合されています。

大阪府HPより

ORION導入の経緯

約50年ほど前に交通戦争と呼ばれた交通事故の負傷者の受入体制が問題となり全国で救命センターが整備されました。

その後プレホスの重要性が平成元年3月からフジテレビ「救急医療にメス」で当時の黒岩キャスター(現神奈川県知事)による80回にもわたるTVキャンペーンによって全国民に日本の病院前救護の脆弱さが周知され、今現在はまだまだ課題があるにせよ日本版パラメディック制度である救急救命士制度が誕生しました。

そして、平成18年に発生した「大淀町立大淀病院事件」を毎日新聞がスクープ。

本事件は大阪地裁により担当医に過失なしと請求は棄却され、原告が控訴しなかったことで判決が確定しましたが、その後の第171回国会総務委員会につながり当時救急隊員なら誰しも思っていた「まもらんNET」「名ばかりの救急医療体制」を是正すべく「消防機関による救急業務としての傷病者の搬送及び医療機関による当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施を図るため、傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準」(大阪ではORION)が導入されました。

そんな経過を経てたどり着いたシステムですが、その実情は?

大阪府HPより

変わらない受入れ体制

効果

一番のメリットは救急現場から転帰までの情報が一括管理できることだと思います。それにより救急隊の入力した情報と病院で診断後入力した情報から救急隊の判断や搬送基準自体の検証が大阪府全域で可能となりました。

800万人以上の住む大阪府全域のデータなので、分母としては十分な数で今後も新しいシステムの構築や研究に役に立つでしょう。

肝心の搬送受入れという観点では。。。。

画面上ではOK!でも実際はNG

では実際の受入れはどうでしょうか?

現職当時ははっきり言って「う~ん、あんまりかわらんな~って」感じでした。

まもってNETもそうでしたが、画面上は〇が付いてるのに連絡すると×なので理由を聞くと、処置中や症状の詳細を聞いて無理という事が多かったです。

https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3071/00382009/08_oosaka202302.pdf

これは令和5年度の大阪市の「傷病者の搬送及び受入れの実施基準」です。

そこには注意書きとして以下の記載があります。

  • 本医療機関リストに掲載された医療機関であっても、手術中その他事情に
    より、傷病者の受け入れができない場合があります。
  • 地域の実情等により、本医療機関リストに掲載されていない医療機関へ搬
    送する場合があります。

しかし、経験上明らかに全く記載されている能力や体制を持っていない病院も散見されます。

ORIONのデータは残念ながら一般人には開示されていませんが、税金で運営されている以上は可視化して、どこの病院が名ばかりの救急病院かという事を明確にし補助金を打ち切り、日頃から本気で救急をしている病院にその分を振り分けて欲しいものです。

大阪府HPより

まとめ

退職して5年が経過しました。現在もいまだ大きな変化ないと現職からは聞いています。

得た情報を集約して今後の搬送基準や病院の受け入れ態勢の見直しという意図は十分理解できます。しかしながら、導入後も搬送開始までの時間があまり短縮できていないという現状の打開が最優先です。

大改正は10年単位、中改正は5年単位、小改正(病院の淘汰)は毎年っていう流れで完成品を目指すべきです。

さもないと第2第3の「大淀町立大淀病院事件」が発生します。

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