【あったらいいな】

消防

喉頭鏡と吸引器

はじめに、今回は非常にマニアックな内容となっていて現役の消防救急救命士向けの内容となっていますので、ご興味の無い方はパスして下さいね。

心肺停止で嘔吐があると気道を確保するためには吸引が必須となります。

吸引するためには頭側についた隊員は左手に喉頭鏡、右手に吸引カテーテルを持ちます。また、気管内挿管適応であれば他の隊員が挿管チューブを準備して、吸引が完了すれば頭側についた隊員の右手に持っている吸引カテーテルと挿管チューブを持ち替えさせる必要があります。

シミュレーションでは「口腔内吐物あり、吸引実施、ウィ~ンウィ~ン、気道クリア」ってなって気管内挿管や他の器具を用いた気道確保になりますが実際の現場では、なかなかそんな甘いものではありません。

ウィ~ンウィ~ン、よし見えた!挿管チューブ入れ。。。。

あかん、また吐物や~って感じになる時もよくあります。

そんな時、喉頭鏡にもし吸引機能が付いていたら片手で操作できるので、空いた右手で挿管チューブを把持し声門が見えた瞬間にスコ~ンと入れれます!

odanより引用

後輩救急救命士がそんな器具を考案してシンポジウムや論文発表した事例があるのでご紹介します。


思いついたきっかけ

  • 救急救命士の気管内挿管時は条件として、声門がまる見えでないといけない
  • 救急隊は3名で救急現場や救急車内という厳しい条件下で気管内挿管を実施しなければいけない
  • 救急隊が使用する医療器具は救急隊様に特化していない
  • 喉頭鏡と吸引器を使用すると両手がふさがり、瞬間的に声門がまる見えになってもすぐに挿管できない

これらの課題をなんとかならんか~っと思っていて思いついたようです。

あったらいいなをかたちにする小林製薬みたいな感じですね。

方法

喉頭鏡は一般的なマッキントッシュ型喉頭鏡で、ブレードをポイ捨てできるプラスチック製ブレードを使用。

カテーテルは、ヤンカー型がいい感じの角度が付いていて口腔内がよく見えるし、手元のスイッチで吸引力の強弱が調整できるので通常の吸引にはもってこいですが、ちょっと太いし硬すぎて喉頭鏡のブレードに沿わすことが出来ないのでクネクネするポリ塩化ビニル製のネラトン型を使用しています。

太さは18Frが比較の結果一番良かったようで、ブレードの最先端より2.5㎝出して孔は上向きで固定です。製品化するには法的にクリアすべき問題が多くるようですが、もし可能ならここは長さ調整できるように改良する必要あります。

既存のものと区別がややこしいので以下、この喉頭鏡と吸引カテーテルがセットになったものを”オノーギ型”と呼びます。

下がそのイメージ図です。

オノーギ型吸引カテーテル接続硬性喉頭鏡の側面図

比較1

気管内挿管ができる気道模型を使用し、まずは口腔内に模擬血液を貯めた状態で比較結果です。

模擬血液は貯めているだけで吸引しきったら気管内挿管ができる状態で、吸引開始から気管内挿管までの比較です。

エントリーは

1 オノーギ型

2 マッキントッシュ型喉頭鏡+ヤンカー型(これは一般的な組合せ)

3 エアウェイスコープ(モニター付き喉頭鏡)+12Frネラトン型カテーテル

*エアウェイスコープは12Frのカテーテルが接続可能

エアウェイスコープ 日本光電ホームページより引用

なお、1と3は単独で気管内挿管まで実施し2は通常通り補助者が1名つきます。

実施者は8名の挿管認定救急救命士で、各自数回練習した後に3回ずつ1~3の順番はランダムに実施。

結果

1 13.74秒±6.89秒

2 15.90秒±3.26秒

3 23.99秒±14.20秒

3は別として1と2はビミョ~な結果です。

比較2

ここからが本番の比較です。おまちかね継続して口腔内に模擬血液が出てくるバージョン。

エアウェイスコープは比較1の時点でエントリー資格なしとなり1と2での比較です。

*エアウェイスコープは非常に優れた医療器具であり、今回の比較の条件には向いてなかっただけです。

こちらは11名の挿管認定救急救命士で、今回も各自数回練習後に3回ずつランダムに実施。

結果

1 22.83秒±15.39秒

2 40.35秒±13.3秒

オノーギ型がぶっちぎりで早いです。なんなら換気確認しても2ではまだ挿管中って感じです。

各カテーテルの吸引時間の比較

カテーテルの性能も関係してくるので、その比較もしています。

吸引圧66.5kPaで生理食塩水300mLの吸引時間は以下の通りです。

ヤンカー型ネラトン型18Frネラトン型16Frネラトン型14Frネラトン型12Fr
9.02秒±020秒7.82秒±0.11秒11.20秒±0.04秒12.73秒±0.33秒17.55秒±0.40秒

比較1の結果では3番のエアウェイスコープが他のデバイスよりかなり時間を要したのは12Frしか接続できないことが要因と推測されますね。

この辺りが救急現場での困難な状況を想定した器具の開発が望まれるところです。

メーカーの方はいろいろな問題はあるとは思いますが、救急現場で使用を目的とするなら医師ではなく、ぜひもっと現場の救急隊員の声を聴いてあげて下さい。

odanより引用

まとめ

  • 喉頭鏡に吸引カテーテルを接続すれば持続的に吸引可能で一人で喉頭展開から吸引、気管内挿管まで実施でき手の空いた隊員は同時進行で他の活動が実施可能
  • 他のデバイスと比較して明らかに時間的にも優位
  • 接続したカテーテルの先端部分の長さ調整は必要
  • 比較検証の人数がちょっと少ないっす
  • 救急現場を一番知っているのは救急隊員

*引用文献 Journal of Japanese Society for Emergency Medicine 2018;21 

サクションカテーテル接続硬性喉頭鏡
ディスポーザブルブレードの開発と効果の検証

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/21/5/21_648/_pdf/-char/ja

これを考案した救急救命士は、毎年R1グランプリに挑戦していました。

最近は忙しくて挑戦できていませんが、余裕ができればきっとまたチャレンジすると思います。そして、もし救急ネタでR1決勝に残っている人がいたら、それは彼かもしれません。

今日はここまで~。

お・し・ま・い

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