ハイブリッド自動車・電気自動車の対応
現職の皆さんは各所属で研修を受けているので、そんなことは言われんでも知ってる~と声が聞こえてきそうですが、総務省消防庁から出された「次世代自動車事故等における消防機関の活動要領」に詳細が書かれています。
網羅はしていますが書き方がやっぱりお役所仕事なので、一から順に書かれており肝心な部分が膨大な文書に埋没しているので、そこに行くまでに読む気をなくしそうになります。
そこで、ハリーが次世代自動車の中で普及が進んでいるプラグインを含むハイブリッド自動車と電気自動車の救急救助について共通する注意点を超簡単にまとめてみました。
高電圧遮断の確認!
ハイブリッド自動車・プラグインハイブリッド自動車・電気自動車と燃料電池車にも高電圧部分があります。
一般的な活動時の事項(状況評価や傷病者アプローチ等)に加えて、高電圧遮断確認が最重要となります。もしできない場合は絶縁保護具をフル装備しての活動となりますが、言い換えれば時間と現場状況の天秤で時間が優先されるなら、最初から絶縁圧保護具を着装した活動で目的である負傷者の救出を実施すればOKとなります。
高電圧配線は主に車体底部のリチウム電池などからモーターに繋がっており法律でオレンジ色に統一されているので見たらわかります。
高電圧遮断方法
エアバッグが開いているような事故なら、その衝撃を検知し自動的に遮断しますが一度以下を確認します。
- パワースイッチ点灯
- メーター点灯
- エアコン作動
- オーディオ作動
- ワイパー作動
- ディスプレイ表示
どれか一つでも該当すれば高電圧が生きてる証拠ですのでオフにしなければいけません。
もっとも簡単な方法は、 車内にアクセスできる状況であればパワースイッチをオフにするだけです。
車内にアクセスする手順はしっかりお願いします。
車内にアクセスできない場合やパワースイッチをオフにしても上記のパワースイッチ点灯等が継続していれば、ヒューズを外します。該当するヒューズがどれかわからん時は全部引っこ抜けばOK!
どちらかが出来れば次に高電圧用システム遮断のため通常の12Vバッテリーの黒端子(ー)を外して末端処理を実施。
ここまでの活動では絶縁保護具は不必要ですが、システム遮断後も数分間は帯電しているので緊急性が高ければやっぱり絶縁保護具を着装して活動開始となります。
パワースイッチオフもヒューズ外しもあかん時は、サービスプラグを外しますがこれには絶縁保護具の着装が必須となります。
サービスプラグは、もちろんこんな時のサービスのためにあるプラグではありませんよ~。
整備時にこれを外して高電圧を遮断するためのものです。
外し方は各メーカーで違いややこしいので、各メーカーのホームページで確認してね。
*ベンツにはレスキュー用にORコードがあります。
*救急車などを点検しているディラーさんとかに頼めば該当車両が入庫した時に外し方など見せてくれるかも
サービスプラグを外した後も電圧が残っているの可能性があるので再度以下を確認しますが、念のために絶縁保護具は着用のままとなります。
- パワースイッチ点灯
- メーター点灯
- エアコン作動
- オーディオ作動
- ワイパー作動
- ディスプレイ表示
なお、スマートキーは発見した時点で次世代自動車に限らず再起動を防ぐために5m以上は遠ざけることをお忘れなく。
読んでいて気付いた方も多くいると思いますが、絶縁保護具の着装は必要になった時ではなく該当車両と判明した時点で実施するか、マンパワーに余裕があれば通常装備隊がアプローチを開始した時点で他の隊が着装して待機しいつでも活動できる体制にする方が早く救出できます。
ここまでが、本日の要点です。以下は参考程度ですので、ご興味のある方はついでに見てって~。
次世代自動車の現状
2020年3月末で国内の次世代自動車の割合は15.2%。
次世代自動車の内訳はハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気、燃料電池、プロパン、メタノールがありますが、国内では約97%はハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車で占めています。
もちろん世界的にも脱化石燃料が進んできていて、世界の次世代自動車は2030年にはガソリン車とディーゼル車の合計を超えて51%になるという予測もあります。
10年後には自動車の半数以上は次世代自動車ってことですので、対応しなければいけない自動車も当然同じ割合になります。
次世代自動車の見分け方
1 手っ取り早いのが運転手などからの聴取
注意点:たまによくわからないまま乗っている人もいてはります!
2 動力源エンブレムの確認
注意点:ハイブリッドが増えてきてフロントやサイドに動力源を示すエンブレムマークがついていないものが増えてきていますし、個人で全てのエンブレムマークを取り外しているオーナーもいます。
トヨタマークの内側が青いものもハイブリッド自動車です。レクサスマークや車種別のエンブレムも同じくハイブリッド自動車ですが、センチュリーやハリアーは例外的にハイブリッド自動車でもエンブレムは青ではないそうです。
参考に「次世代自動車事故等における消防機関の活動要領」 4ページ目に各メーカーのハイブリッドのエンブレムがありますので一度ご覧ください。結構しらんものもありますよ。
3 車検証で確認 こっちは簡単で燃料の種類か備考欄でわかります。
4 コーションプレートの確認 車検証が見れない場合に有用ですが、小っちゃくて場所もいろいろです。
「DAA-〇〇××・・・」とプレートに表記されています。
MODELの欄で前半のDAAが、今回重要な自動車排出ガス規制及び低排出ガス車認定の識別記号です。そこから下記の表で平成17年基準排出ガス75%低減レベルのハイブリッド車とわかります。
ABA | 平成17年規制に適合させたもの |
AAA | 平成17年規制に適合させたハイブリッド車 |
CBA | 平成17年基準排出ガス50%低減レベルのもの |
DBA | 平成17年基準排出ガス75%低減レベルのもの |
CAA | 平成17年基準排出ガス50%低減レベルのハイブリッド車 |
DAA | 平成17年基準排出ガス75%低減レベルのハイブリッド車 |
5 排気管(マフラー)がない=電気自動車
まとめ
高電圧が存在する次世代自動車の対応は一般的なアプローチに加えて高電圧遮断
- 高電圧の遮断はパワースイッチオフが簡単
- 高電圧の遮断後はしっかり確認
- 絶縁保護具を着装しとけば時間短縮
- 次世代自動車かどうかわからん時は車検証確認
おまけ
皆さんの所属では年間に何回実車を破壊しての救出訓練を実施していますか?
それは十分ですか?
破壊ばかりに気を取られて負傷者へのロジカルなアプローチはおろそかになっていませんか?
知識×経験=現場力!
International Trauma Life Support では迅速に救助することを目的とした交通事故に特化したアクセスコースを開催しています。現在はコロナが終息するまで開催予定はありませんが、 本国アメリカでのコースよりもさらに洗練された内容となっており、車両救出のスキルアップを目指す消防職員には最適なコース内容となっていますので、ご興味のある方はチャレンジしてください。
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