今回はEVとPHVの事故でドアから負傷者を救出さる際のドアの解放についてです。ポイントはガソリン車などでは存在しないドア付近の高電圧の配線についての理解となります。
ガソリン車などとの相違点
EVとPHVには下の写真の手で示しているドアの近くに高電圧ケーブルを備えた充電ポートがある車両があります。
交通事故で閉じ込め状態となり破損によりドアが開かない場合では、ヒンジやラッチにアプローチしてドアを開放することが一般的です。
その場合の方法として、フェンダーラインを救助器具で押しつぶして(下の写真①)ヒンジ部分に隙間をつくり(写真②)、ヒンジにアクセスする場合があります。
が~しかし、EVなどの場合はこの①で圧し潰すフェンダー部分や②がどのように設計されているか考えてみましょう。
このフェンダーに圧力がかかると②にある高電圧ケーブルや充電器が副次的に破壊される可能性がでてきます。
では、具体的にどうするか?の一例です。
窓枠からのアクセス
フェンダーが変形することなく②の部分に隙間を作りヒンジにアプローチできるようにするためには、②の部分のドア側に救助器具が差し込める隙間ができるように、窓を押し広げます。
方法はAピラーとドア上部に救助器具をあててドアを変形させていく。
ある程度の隙間が出来れば切断用の救助器具を差し込んで上部ヒンジを切断。
下部のヒンジを切断するために隙間をさらに拡げる。
そして下部のヒンジも切断。
この時、フェンダーが変形しますがファエンダーカバーのみで高電圧部品の構造には影響はない。
ラッチ部分も救助器具で外す。
完了!
この作業をする前に!
EVだけではなくどんな車でも共通ですが、窓が開いている場合や窓ガラスを破壊してドアノブ操作できる状態であれば、それを引いてドアが開けば、もちろん破壊する必要はありません。
いよいよ破壊すると戦術が決定すれば、破壊の前にドアの内側のシールと内張を剥がしてSRSの存在を確認します。
SRSは取り外す必要はありませんが、位置を特定することで器具の設置場所や破壊箇所として避ければ二次的な被害が予防できます。
まとめ
本記事はFire EngineeringのElectric Vehicles: Door Access and Removalを基に作成しています。そちらの方が動画でわかりやすいのでぜひご覧ください。
最も大事なことは、破壊活動は方法の一つであって目的は負傷者の状態を改善、少なくとも悪化を防ぎながらの救出となります。
現場の状況、車の状態、負傷者の程度のSSUの総合点を上回る力量を乗組みが変わっても随時持てる様に、日頃から訓練することが必要です。
ここで言う訓練は、実車を使った訓練だけではありません。こんな場合はどうする?などのデスカッションや新車が出るたびにHPでその車のSRS構造や高電圧遮断方法をチェックし隊で共有するだけでも効果は題です。
また、今後は更にEV化が進み、その先には水素燃料車も見えています。どうか事案の後に「調べとけばよかった」という事が無いようにアンテナは高く持って地元のメーカーとの勉強会も実施していきましょう。
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