「メーデーコール」
海外の映画で、飛行機やヘリコプターが墜落する時などに「メーデー!メーデー!メーデー!」と言っているのを一度は観たことがあると思います。
この「メーデー (mayday)」とは、フランス語の「m’aidez:助けて」から由来しており航空機や船舶などが危険な状況に陥り、直ちに救援を必要とする場合に発する国際的な救援信号です。
アメリカの消防士もこれに準じて、火災やその他の緊急事態で迅速な対応が必要となった場合に、「メーデー」を3回繰り返して同僚に危機を伝えます。
一方、日本の消防では「メーデー」ではなく他の緊急コールを使用しますが、おそらく私が所属していた本部と同様に「緊急!緊急!緊急!」だと思います。
「メーデー」や「緊急」を3回連続コールする理由は、緊急事態であることを強調し現場活動隊の注意を集中させ、また通常の無線交信と区別することです。
この緊急コールを傍受すれば、現場指揮者若しくは本部と緊急コール発信隊との無線を最優先する必要があるため他の活動隊は無線の使用を控えます。
この様な状況下では、最優先で仲間の救出に全隊が集中します。
前置きが長くなりましたが、今回は消防士がメーデー(緊急)コールを発信した場合の救援対応についてです。
消防士が現場で陥る危機的状況
各消防本部ではいろいろな想定で救急救助訓練に多くの時間を費やしています。そして救急隊に引継ぐまでの基本的な処置も救出活動中の消防隊で実施するという訓練も実施します。これらはこれまでの経験や知識からある程度の手順(プロトコル)がありそれに基づいて実施されます。
それと同様に、助ける側である重装備の消防士が完全装備下で心肺停止状態に陥った場合に何をすべきかについてプロトコル的なものがあれば訓練が実施できるので、その様な状況に陥った際にも活動が容易になります。
危機的な状況の典型は心肺停止ですので、今回はその対応をご紹介します。
消防士の心肺停止
ポイントは、何らかの要因で突然の心停止に陥った完全装備の消防士に対して即座に心肺蘇生を開始し、その胸骨圧迫を中断することなく個人装備を解放することになります。
準備
倒れた消防士を危険な環境から離脱させ、新鮮な空気を供給するために蘇生処置が安全に実施できる場所まで防火衣や呼吸器を装着したまま搬出します。
ステップ1
頭側の救助者(救助者 1)は倒れた消防士の頭部を面体やヘルメットを装着したまま自身の足の間に置く
ステップ2
救助者2は高品質の圧迫を遅滞なく開始
ステップ3
救助者1は面体内に空気を供給するためバイパス弁を開放
これにより胸骨圧迫の受動換気が容易になる
※以下のステップ4~8は救助者相互で協力し、胸骨圧迫の中断時間は最小限にする。
ステップ4
救助者1はヘルメットと面体を外す
ステップ5
救助者3は防火衣前部の留め具を外す
ステップ6
救助者1は呼吸器の胸ベルトを外し要救助者の腕をバンザイさせる
ステップ7
救急隊3は完全に防火衣の前面を開放する。その間も救助者2は胸骨圧迫を中断する必要はない
ステップ8
救助者1はジャケットを保持し、ステップ10の準備をする
ステップ9
足側の救助者3、4はそれぞれ左右の足を掴み、被害者を防火衣と呼吸器から引き抜く
※状況によって両足を救助者3が1人で引き、救助者4が頭部保持も考慮
ステップ10
救助者全員で包括的な蘇生を開始
以上となります。
今回の内容は http://fd-cpr.com/index.html を内容に基づいて作成していますのでご興味のある方はそちらもご覧ください。
一連の流れは以下の動画で確認できます。
他の同様の動画もYoutubeで【firefighter cpr】と検索すればたくさん出てきますので、参考にして下さい。
数回練習すれば簡単にできる様になるので、かけがえのない仲間の命を守るためにも所属の全員に必須スキルです。
私が現役の時は応用編で陽圧式化学防護服バージョンも実施しましたが、その場合は前部のジッパーの解放は同じですが、陽圧式化学防護服の切断も必要です。
外傷や熱傷などのケースもあり得ますので、是非皆さんの所属でそれぞれ工夫して実施して下さい。
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