ベトナム社会主義共和国編
基礎知識
- 面積 32万9,241平方キロメートル(日本よりちょっと小さく、イタリアよりちょっと大きい)
- 人口約 1億30万人(2023年、越統計総局)
- 首都 ハノイ
- 民族 キン族(越人)約86%、他に53の少数民族
- 言語 ベトナム語
- 宗教 仏教、カトリック、カオダイ教他
救急医療サービスの現状
保健省により一次から三次までの各レベルの病院における病院前救護の役割が示され、全ての省に病院前救護サービスを向上させるための投資計画を策定するよう指示している
ベトナムの病院数(2012) 国立44・省376・郡615
しかし人員や予算、機材等の不足や保健セクター内での優先順位が高くないことなどが理由で、多くの省において進捗が遅れている
北部の救急医療サービス(EMS)はフランス式で、救急部が外科と内科に分かれている
南部はアメリカ式を採用しており、救急部は分かれておらず、一つの部門となっている
救急指令センター
ベトナムの公的救急通報番号は115番で、115番救急搬送センターが各省病院に設置されたが、利用者数が少ないことや運営費が確保できないこ
となどから、多くのセンターが閉鎖され、現在はハノイ、ホーチミン、フエ、ハイフォンなど大都市に 6~8カ所あるのみとなっている
救急搬送サービス
ベトナムでは、事故現場に居合わせた人が傷病者を搬送するという社会文化的慣習があるが、搬送方法が適切ではない場合、傷病者に害を及ぼす可能性もある
そのため保健省決定では、病院前外傷ケアモデルが示されており、その中でファーストレスポンダーとしてコミュニティボランティアや職場の従業員、公共交通機関の運転手、交通警察官を想定し、彼らの医療機関とのコミュニケーション能力(115 への通報など)の向上を促している
115番救急システムの救急車サービスが提供さる救急車には通常医師1名、看護師2名が乗車することになっている
しかし、地方部において人材が不足してることから、医師及び看護師が救急車に乗車することは困難な状況である
救急車サービス代は利用者負担であるが、利用者は支払いを拒否することができ、その場合は受け入れ病院が費用を負担することになる
交通事故の際には、交通保険(Traffic Insurance)から支払われ、職場での事故の場合には、従前は雇主が負担していたが、加入していれば本人の健康保険から支払われるようになった
救急車サービスは提供されているものの、前述の通り115救急サービスの利用は少ない状況である
理由として、救急車が現場に到着するまでに時間がかかることがあげられる
結果として病院に直接電話をして病院救急車を呼んだり、タクシーなどで自ら病院に出向いたりする例が多い
また、民間の救急車サービスもあるが、費用は高く応急手当もなく搬送のみである
ベトナムの救急救命士
ベトナムでは救急救命士(EMT)は職種として確立されていないために身分や待遇が保障されておらず、必要性は高いものの人員数が不足している
反面、看護師はこれから供給過剰になることが予測されており、看護師の中からEMTを育成することで、遠隔地での病院前救護サービスの拡充に貢献することが期待されている
受入れ先の一つであるバックマイ病院では、救急医に対して外傷初期診療(ATLS)/外科初期診療ガイドライン(JATEC)研修を実施している
まとめ
関連する政策や法制度は近年整備されてきており、基幹病院では緊急時への備えも整備されてきたが、
災害管理センターの能力強化や地方レベルにおける実施促進が今後の課題である
特に地方の現場レベルでは、保健セクターの優先課題は多く、緊急対応や備えの優先度は必ずしも高いとは言えないため、十分なリソースが分配されない
EMSについても、交通事故の増加に伴いニーズが高まっていることなどから、今後さらに整備を進める必要がある
*本記事は「ASEAN 災害医療・救急医療にかかる情報収集・確認調査ファイナルレポート」を参考に作成しています
コメント