今回はプレアライバルコールやコールバックと呼ばれている、救急隊が現場到着までの間に救急要請者に電話をし状況の確認や応急手当などの指示をする行為についてのお話です。
プレアライバルコールは所属や隊によって、もしくはその日の隊長によって実施するかどうか違うと思います。
結論的なものは今回はありませんので、それでもいいよ~って方は読んでもらってご自身で考えて下さい。
プレアライバルコールの有用性
得られる情報としては大きく分けて二つです。
- 傷病者に関する情報
- 発生場所に関する情報
傷病者に関する情報
傷病者に関する情報とは主訴から発生状況、時間の経過に伴う変化や普段の病歴などほとんど聴取可能です。
その情報から救急隊としては追加の資器材の準備や搬出方法、搬送先の絞り込みなど活動の方針が隊で共有可能となります。
通報者に対してはするべき応急手当や準備品などを伝えることが可能です。
発生場所に関する情報
発生場所に関する情報からは状況によって誘導の必要性や商業施設等なら詳細な場所が直接聴取することで接触時間の短縮が可能です。
どちらの情報も最終的には医療機関への搬送時間が短縮されるので、緊急度が高ければ高いほど有用だと考えられます。
また、他の効果としては通報者が現場に向かっている救急隊と直接会話することで安心感を得ることができます。
これだけを考えるとプレアライバルコールはやる方がいいようにも思えますが、これには前提条件があります。
プレアライバルコール成立の前提条件
- 通報者が電話対応できる
- 情報が正しい
- 救急隊に聞き取り能力がある
通報者が電話対応できる
よくあるケースとしては指令課員が既に心肺蘇生などの口頭指示を実施している場合や通報者が関係者に連絡をしている場合などでコールしても話中になっていたりします。
情報が正しい
何をもって情報が正しいっていう判断はいろいろありますが、普段見慣れていない状況を突然口頭で伝わるように伝えるというのは非常に難しい作業です。
救急隊に聞き取り能力がある
限られた時間で人生最大のピンチ状態かもしれない通報者から必要な情報を聴取し、通報者に的確な指示を与えるスキルは非常に重要です。
しかし、このニッチでデープなスキルに対するきちんとした教育方法が現状では確立されていません。結局は本部のマニュアルや経験から得られる知識、いわゆる知恵に依存します。
プレアライバルコールを実施した場合と実施しなかった場合の違い
では、プレアライバルコールを実施した場合と未実施の場合の救急隊の活動に違いは何でしょうか?
各個人や隊によってこれはいろんな意見があると思います。
私個人の意見としては、経験上から活動に違いは何もありません。
理由としては
- ある程度の情報は119番受信時に得ている
- 通報内容は参考程度
どんな通報内容であっても実際に観察するまでは、通報内容を疑って視野を広く持ち俯瞰的に接触することが重要です。
プレアライバルコールで得た情報で活動方針を決めてしまうと、どうしても視野が狭くなります。
多くの場合はこれでうまくいくので、「できる救急隊」とよく勘違いしている救急隊長が多いです。
風邪気味と本人から通報⇒玄関まで歩いてきてから意識消失⇒CPA⇒その場で除細動1回でROSC(自己心拍再開)
腹痛で本人から通報⇒飲酒後に便意が強く近くに便所がないので救急要請と本人から聴取、便所のある場所に搬送希望⇒病院搬送⇒診断名「腹部大動脈瘤」
これらは経験した事例ですが、プレアライバルコールは実施していました。しかし、現場に全ての資器材を持参していたことや、通常の観察から搬送先を決定した事案です。
要は手順通りの基本活動ってことです。
プレアライバルコールの欠点
最大かつ唯一の欠点は、使用している電話のスピーカー機の使用方法を知らない場合に119番をした時に心肺蘇生法の指導を受けて実施中にプレアライバルコールに対応したばかりに胸骨圧迫の手が止まることです。
これは上記の有用性すべてを打ち消すぐらいのデメリットですので、119番指令課員が口頭指導を行ったと情報があれば、指令課員から詳細を確認しましょう。
その反面、119番受信時にCPAと判断されなかったケースでも心肺蘇生法が必要な状態と判断し口頭指示ができるケースもあり得ます。
まとめ
- プレアライバルコールの限界を理解する
- プレアライバルコールで得た情報は正しくもあり間違いでもある
- 救急活動の導入部分は基本的な活動から入る
- 基本的には実施した方がいいかも
時代は進んでSNSなどでの動画付き通報も始まると思います。そうなればまたそれに応じた早期の情報の把握や伝達方法も進化していくでしょう。
プレアライバルコールの目的は早期に正しい情報を得ることにより早期に正しい医療機関への搬送することですので、もっといい方向に進むと思います。
しかし、どんな事案であれ基本的な活動の大事ですのでお忘れなく!
お・わ・り
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