救急や消防の現場では、最初の数分間に何を見るかで、その後の展開はほぼ決まる。
処置や手技よりも前に、「どう判断したか」「なぜそう判断したか」が結果を左右する場面は少なくない。
アメリカの消防・救急教育メディアであるFire Engineering Magazine の動画では、この「判断の層」が一貫して強調されている。
これは、日本の救急活動やPEMECとも実は深く共通する考え方だ。

なぜアメリカの消防は「最初の数分」にこだわるのか
Fire Engineeringの動画で繰り返し語られるのは、「後から修正できない判断が、最初に集中している」という事実である。
到着直後の数分間に、
- 何が起きているのか
- これから何が起きそうなのか
- 自分たちに何ができるのか
これらを正しく整理できなければ、その後にどれだけ処置を重ねても、状況は好転しにくい。
だからこそアメリカの消防・救急では、first arriving unit(最初に到着した隊)の
判断の質が重視される。

Fire Engineeringが強調する「見るポイント」
Fire Engineeringの多くの解説動画を見ていると、判断の前提として、次の3点が必ず整理されている。

Fire Engineering Magazine の解説動画では、現場到着直後のサイズアップと初動判断が、その後の活動全体を左右すると繰り返し語られている。
1.状況(Scene)
- 現場は安全か
- 何が起きているか
- 何が起きる可能性があるか
単に「今」だけでなく、少し先を読む視点が含まれている。
2.人(Patient / Victim)
- 今の状態はどうか
- 悪化を示す兆候はないか
これは日本の救急でいう初期評価(A・B・C・D)と同じ発想である。
3.自分たち(Crew)
- 何ができるか
- 何ができないか
- 支援や応援が必要か
能力や資源を冷静に把握することも、判断の一部として扱われている。

Fire Engineering Magazine の解説動画では、現場到着直後のサイズアップと初動判断が、
その後の活動全体を左右すると繰り返し語られている。
「手技の前に判断がある」という考え方
Fire Engineeringの動画で特徴的なのは、処置や技術の話にすぐ入らない点だ。
まず語られるのは、
- なぜその判断をしたのか
- なぜその選択をしたのか
という思考の過程である。
これは、日本においても外傷や内因性にかかわらず「処置の前に緊急度判定を行う」という構造を持っていることと一致する。
処置はあとから追加できる。しかし判断は、あとからやり直すことができない。
日本のPEMECと、実は同じところを見ている

用語は違っていても、見ている本質は驚くほど似ている。
| アメリカ(Fire Engineering) | 日本(PEMEC) |
|---|---|
| Size-up | 状況評価 |
| Initial decision | 緊急度判定 |
| First five minutes | 初期評価 |
| Decision before action | 処置前判断 |
アメリカの消防・救急が重視する考え方は、決して特別なものではない。
日本の救急活動でも、すでに同じ思想が組み込まれている。
なぜ「判断の教育」が重要なのか
手技は、
- マニュアル化しやすい
- 評価しやすい
一方、判断は、
- 見えにくい
- 教えにくい
だからこそFire Engineeringでは、成功事例だけでなく、失敗や判断ミス、振り返り(After Action Review)が多く扱われている。
失敗を共有し、次の判断に活かす文化そのものが、教育の中心に置かれている。これは、日本の救急教育においても今後ますます重要になる視点だろう。
まとめ:技術より前に、見る力を
救命は、119番から始まっている。そしてその先で、何を見て、どう判断するかが命を分ける。Fire Engineeringが伝えているのは、最新技術や派手な手技ではない。判断の考え方そのものである。

※参考:Fire Engineering Magazine(YouTube公式チャンネル)





コメント