救急車を呼び、病院に連絡してもらった結果、「受け入れできません」と言われる。
この経験に対して、「病院は冷たい」「命より都合を優先している」と感じてしまうのは、自然なことです。
ただ、現在の日本の救急医療では、「聞いてから断る」という対応が、感情ではなく合理性で選ばれている場面が確実に存在します。
今回は、その背景を市民の立場から整理します。

第2回で触れた理由のほかにも、知っておくと誤解が減る話があります
第2回では、病院が受け入れを判断する際に確認している基本として、
・病床の空き状況
・対応できる診療科や医師の有無
・他の重症患者との優先順位
といった点を、簡単に整理しました。これらは、制度的にも医学的にも重要な判断基準です。
今回はそれに加えて、夜間・休日の体制や、受診の集中といった、あまり知られていない事情を補足します。
病院は「断りたい」のではなく「無理ができない」
多くの病院は、最初から受け入れを拒否したいわけではありません。ただし現在の医療現場では、
・一度の無理が医療事故につながる
・医療事故は病院全体の機能停止につながる
・スタッフが限界を超えると、次の患者を守れなくなる
という現実があります。
そのため病院は、「何とか受ける」より 「安全に診られない場合は受けない」という判断を、組織として選ばざるを得なくなっています。
夜間・休日の医療体制は、昼間と同じではありません
あまり知られていませんが、夜間や休日の病院体制は、平日昼間とは大きく異なります。
具体的には、
・当直医が非常勤医師(いわゆる当直担当)である
・看護師も通常とは異なる応援体制である
・初対面同士のスタッフでチームを組んでいる
ということも珍しくありません。
これは「やる気がない」「質が低い」という話ではありません。その時間帯、そのメンバーで、安全に対応できる範囲が限られているという、構造上の制約です。
その結果、
「とりあえず受けてから考える」より、 「話を聞いたうえで断る」方が、患者さんを守る判断になる場合があります。

「コンビニ受診」が医療を静かに圧迫している現実
もう一つ、医療現場を圧迫している要因があります。それが、緊急性が高くない症状での救急受診、いわゆる「コンビニ受診」です。
これは市民を責める話ではありません。ただし現実として、
・夜間・休日に軽症の受診が集中する
・限られたスタッフと病床が使われる
・結果として重症患者への対応余力が削られる
という影響が出ています。
救急・病院・市民は、それぞれ違う「正しさ」で動いています
・病院は、医療事故を防ぎ医療機能を守るため
・救急隊は、目の前の患者を一刻も早くつなぐため
・市民は、不安を早く解消するため
それぞれが合理的に行動しています。だからこそ、すれ違いが起こります。
最終回のまとめ
「聞いてから断る」病院が増えたのは、医療が冷たくなったからではありません。合理的でいなければ、医療そのものが続かなくなったからです。
市民向けQ&A|知っておくとトラブルを減らせるポイント

Q1.救急車を呼んだのに、病院に断られるのはおかしくないの?
おかしいことではありません。
その時間帯の体制や医療安全を考えた結果、「今は安全に診られない」と判断される場合があります。
Q2.救急車を呼ぶべきか迷ったときは、どうすればいいですか?
判断に迷うときは、救急相談窓口「#7119」を利用してください。
症状を伝えると、
・救急車を呼ぶべきか
・今すぐ受診が必要か
・様子を見てもよいか
を、専門職が一緒に整理してくれます。
Q3.夜ならどこかの病院は空いているのでは?
夜間・休日は、昼間よりも医師・看護師が少ない体制で動いています。
ベッドが空いていても、対応できる人員がそろわなければ受け入れはできません。
Q4.軽い症状で受診すると、迷惑になりますか?
迷惑ということはありません。
ただし、軽症の受診が集中すると、本当に緊急性の高い患者への対応余力が減ることがあります。
Q5.どう行動すれば、医療を守ることにつながりますか?
・迷ったら #7119 に相談する
・緊急度に応じた受診先を選ぶ
・現場の判断があることを理解する
それが結果として、
自分や家族が本当に必要なときに医療を受けられる環境を守ることにつながります。

・顔の片側が歪む
・片側の腕、手に力が入らない
・呂律が回らない
・言葉が出ない
・他人の言うことが理解できない
このような症状が一つでも突然起こったら、脳卒中を疑い、すぐに救急車を呼びましょう。




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