世界の救急車 FINAL

シンガポール救急事情

第1回、第2回に続き世界の救急車シリーズ最終回です。

Piaggio Porter

ピアッジオ・ポータ救急車は、スクーターのベスパで有名な企業Piaggio社が製造する軽量でコンパクトな救急車です。

面白いのは初代Piaggio Porterの原型はダイハツハイゼットで、当初は商品輸送用のパネルバン、人と貨物輸送用の4席のバンだけでしたが、追加バージョンとしてアクセスが困難なイタリアの村を対象とした救急車モデルが誕生した経緯があるそうです。

ダイハツ・ハイゼット
Piaggio Porter Ambulance


小型であるため、狭い道や都市部での運用に非常に適しており、優れた機動性と相まって交通渋滞の多い都市環境でも活躍しています。

また、燃費が良く、運用コストも比較的低いため、予算が限られた医療機関にも適しています

室内はやはり狭くなりますが、必要な医療機器を搭載できるよう内部のレイアウトをカスタマイズすることで、使用機関が必要とする担架や基本的な救急医療設備も配置できます。

基本的な諸元

  • エンジン: 1.3リッターガソリンエンジンまたは電動モーター(モデルによる)
  • 最高出力: 約65馬力(ガソリンエンジンの場合)
  • 全長: 約3,400 mm 全幅: 約1,500 mm 全高: 約1,870 mm ホイールベース: 約1,830 mm
  • 最大積載量: 約700 kg(モデルによる)
  • 車両重量: 約1,200 kg(モデルによる)
  • 燃費: 約15-20 km/L(ガソリンエンジンの場合)
  • 電動バージョンの航続距離: 約100 km(バッテリー容量による)

主な運用国

  • イタリア:Piaggioの本拠地であり、都市部の救急医療に広く使用されています。
  • インド:コンパクトで経済的な特徴が評価され、都市部および農村部で利用されています。
  • 他のヨーロッパ諸国:フランス、スペイン、ギリシャなど、狭い道が多い都市部を中心に使用されています。
  • アジアの一部地域:香港など狭い道や交通量が多い地域での利用が進んでいます。
  • 南米:経済的なメリットが評価され、一部の国では都市部や地方の救急サービスで使用されています。

日本でも2011年に国が救急車の要件を緩和したことで、各地の消防が軽自動車をベースとした救急車両を運用開始し、山間部や離島で通常の救急車が通れない地域で活躍中です。

江田島市
土佐市
姫路市

Renault Master

ルノー マスターは大容量の内部空間を持ち、医療機器の配置や患者の搬送に十分なスペースを提供し、内部レイアウトや装備のカスタマイズが容易なので、さまざまな医療機器を効率的に配置できます。

高性能なディーゼルエンジンを搭載し、衝突回避システム、車線逸脱警報、アクティブブレーキアシストなどの先進の安全機能が搭載されています。

ルノーマスター救急車は世界中の多くの国と機関で広く運用されており、特にヨーロッパの国々では非常に一般的であり、多様な緊急医療ニーズに対応できる優れた車両として認識されています

基本的な諸元

  • エンジン: ターボディーゼル
  • 排気量: 約2.3〜2.5リットル
  • 出力: 約110〜180馬力
  • トルク: 約285〜400 Nm     
  • 全長: 約5,000〜6,800 mm
  • 全幅: 約2,070 mm
  • 全高: 約2,250〜2,800 mm
  • ホイールベース: 約3,200〜4,300 mm                            
  • 燃費: 約10〜13 km/L
  • 車両総重量: 約3,500〜4,500 kg

主な運用国

  • フランス:ルノーはフランスの自動車メーカーであり、国内の多くの救急サービスや病院でRenault Masterの救急車を使用しています。
  • イギリス:イギリスでもRenault Masterは広く利用されており、NHS(国民保健サービス)をはじめとする多くの救急医療機関で使用されています。
  • ドイツ:ドイツの救急医療サービスもRenault Masterを導入しており、その高い信頼性とパフォーマンスが評価されています。
  • スペイン:地方自治体や病院で活躍しています。
  • イタリア:救急医療機関でRenault Masterを採用しており、その広い内部空間と機動力が高く評価されています。
  • オーストラリア:Renault Masterは救急車として利用されており、広大な地域での緊急対応に適しています

IVECO DAILY AMBULANCE

イヴェコは元々はフィアットグループの一員でしたが、1975年に独立したイタリアの自動車会社です。イタリアのトリノに本社を置き長年にわたり世界的展開を拡大し、現在ではイタリア、フランス、ドイツ、スペイン、中国、アルゼンチン、ブラジル、ロシアを含む16か国で27の製造工場を運営する大手メーカーです。

IVECO DAILY AMBULANCEは広い内部空間、強力なエンジン、カスタマイズの柔軟性、安全装備、高い耐久性、快適性、運転性能、経済性など、多くの優れた特徴を持っています。

基本的な諸元

  • エンジン: 2.3L – 3.0L ターボディーゼルエンジン
  • 馬力: 116 – 205馬力
  • トルク: 320 – 470 Nm
  • トランスミッション: 6速マニュアル、または8速オートマチック
  • 最大積載量: 約1,200 – 2,500 kg
  • 全長: 約5,200 mm – 7,500 mm(バージョンによる)
  • 全幅: 約2,000 mm – 2,100 mm
  • 全高: 約2,300 mm – 2,900 mm(バージョンによる)
  • ホイールベース: 約3,000 mm – 4,350 mm(バージョンによる)
  • 燃費: 約10 – 14 km/L(市街地・高速道路併用)

主な運用国

  • イタリア:IVECOの本国であり、多くの病院や緊急医療サービスでデイリーが使用されています。都市部と地方の両方での救急対応に適しています。
  • フランス:SAMUや民間救急搬送業者で多くのIVECO デイリーが活躍しています。
  • ドイツ:IVECO デイリーは信頼性の高い救急車として利用されています。
  • イギリス:多くのNHS(国民保健サービス)の救急医療部門で使用されています。
  • スペイン:特に地方都市や山間部での救急対応に使用されています。
  • オーストラリア:EMSで使用されており、その耐久性と高い機動性が評価されています。
  • ブラジル:都市部から地方まで幅広く使用されており、迅速な救急対応に役立っています。
  • 南アフリカ:南アフリカの救急医療サービスでもその高い耐久性と信頼性が評価されています。   
  • トルコ:救急車として広く運用されています

おまけ:日本の救急車の歴史

日本で活躍した代表的な救急車を古い順からどうぞ!

1930年代
1940年代
1960年代 トヨタクラウン
1970年代 ハイエース
1980年代2B

ここから日本でも病院前医療が実施可能な救急救命士が誕生し、高規格救急車の時代へ

1990年代 メルセデスベンツ社製
1990年代 初代ハイメディック登場!
2000年代 2代目ハイメディック

そして、最後にご紹介するのは最新のEV救急車である日産「パラメディック」

電動ストレッチャーや、33kWhと8kWhの2つのリチウムイオンバッテリーを搭載するため、電装機器やエアコンをより長時間作動させることが可能で、停電時や災害時には移動電源としても活用できます

東日本大震災では、救急車から100Vの製品が充電できるので消防隊員が所持しているスマホの充電センターになっていたことを考えると、大災害時には初めの3日間ほどは地域の方や現地本部の貴重な電源車で活用も可能です。

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