〖日本の防火服〗の基準 欧州EN469・米国NFPAと日本の考え方の違い

アパレル

防火服(バンカーギア)は「どれでも同じ」ではありません。
国や地域によって消防活動の前提が違うため、防火服の思想や性能要求も異なります。

世界の防火服は大きく以下の2系統で語るとわかりやすいです。

  • 北米型(米国NFPA系)
  • 欧州型(EN469系)

欧米のNFPA・EN規格と比べると、そこには「安全思想そのもの」の違いが見えてくる。

そしてよく聞かれるのが「日本はどっち?」という質問。
結論から言うと日本は、気候・建物構造・活動服着用前提などの事情から、現場運用としては欧州型に近い考え方が主流です。


主要規格の対応関係(ざっくり地図)

まず防火服の議論をするなら、国際的には次の2つが中心規格です。

  • 欧州:EN 469(消防活動用防護服の中心規格)
  • 米国:NFPA 1971(構造火災用PPEの中心規格)
    ※近年はNFPA 1970へ統合・再編の流れ

日本は欧米のように「防火衣=この国家規格」と一本化されているわけではなく、
自治体仕様・メーカー仕様の中で、関連規格やガイドラインを参照して整合を取ることが多いのが特徴です。


北米型(NFPA系)の特徴|耐熱性重視の思想

北米型(米国型)は端的に言えば、「火炎・熱から守ること最優先」

北米型の特徴

  • 耐熱性重視
  • Tシャツの上からでも着装できる思想
  • 快適性・機能性は二の次になりやすい

米国の構造火災では「建物内進入」を前提とした活動が多く、
装備は“守らな死ぬ”という価値観で設計・試験・認証まで組まれています。


欧州型(EN469系)の特徴|快適性・機能性重視の思想

欧州型は、耐熱だけでなく快適性・機能性も含めた総合バランスを重視します。

欧州型の特徴

  • 快適性・機能性重視
  • 活動服の上から着る前提
  • 耐熱性は北米型より劣る傾向

欧州の発想は「耐熱だけやなく、動きやすさ・蒸れにくさも命を守る」。
この熱ストレス対策を含む思想が、EN469の要求にも反映されています。


左はアメリカ:ニューヨーク消防、右はイギリス:ロンドン消防です。見た目は似ていますが、分厚さと素材の違いで肩のラインがアメリカの方は全くわかりません。

日本はどっち?|結論:欧州型に近い運用

日本の現場条件をざっくり整理すると、こうなります。

  • 夏が暑い(熱ストレスが大きい)
  • 活動服を着て防火服を着装する
  • 火災以外の活動にも防火服で行くことが多い
  • 真夏でも上衣を脱がず活動する文化が強い

こういう条件が揃うと、「守る」だけではなく「動ける・蒸れにくい」が重要。
だからこそ日本は、現場運用として欧州型に近い判断が合理的です。

20年前
現在

快適性と耐熱性はトレードオフ

防火服は次の2つが相反します。

  • 耐熱性:熱・炎から守る
  • 快適性:蒸れにくい・動きやすい(熱ストレス軽減)

北米は「多少動きにくくても守る」。
欧州は「総合バランスが命を守る」。
この思想の違いが装備に表れます。


【比較表】北米型・欧州型・日本の考え方

項目北米型(NFPA系)欧州型(EN469系)日本(運用)
中心規格NFPA 1971(→NFPA 1970へ統合の流れ)EN 469自治体仕様+関連規格/ガイドライン参照
思想耐熱・耐炎を最優先快適性・機能性も含め総合バランス気候・活動文化から欧州寄りが多い
活動服必須ではない設計も多い活動服の上から着る前提活動服の上から着装が基本
特徴堅牢・厚い・保護強め動きやすい・蒸れ対策現場の汎用性重視

【チェックリスト】防火服を選ぶ時に見るべきポイント(調達・寄付にも使える)

以下は「実務で事故らない」ためのチェック項目です。
調達仕様書や寄付・供与の判断材料にも使えます。

1)適合規格(まずここ)

  • EN 469 / NFPA 1971 / NFPA 1970 のどれに適合しているか明記されているか
  • 第三者認証(認証ラベル)があるか
  • 規格の版(年号)が明示されているか

2)熱防護(耐熱・放射熱)

  • 外層・防水層・断熱層の構成が明確か
  • 放射熱環境を想定しているか
  • 熱ストレス対策(透湿・ベンチレーション)があるか

3)視認性(反射材など)

  • 反射材の幅・配置・劣化耐性は十分か
  • 夜間・煙中で見える設計か

4)機能性(動きやすさ)

  • 屈曲(膝・肘・肩)で動作制限が出ないか
  • ポケット配置・無線・ロープ・手袋の干渉はないか
  • 着脱のしやすさ(緊急脱衣含む)は確保されているか

5)日本の現場で重要な追加視点

  • 高温多湿(夏季)で熱ストレスが限界にならないか
  • 火災以外(救助・警戒・災害)にも対応できるか
  • サイズ展開と隊員体格にフィットするか

よくある質問(FAQ)

Q. 日本の防火服の基準はJISですか?

日本は欧米のように「防火服=この国家規格」と一本化されているわけではありません。
自治体の仕様や運用基準の中で、関連規格やガイドラインを参照して整合を取ることが多いです。

Q. EN469とNFPAはどっちが上ですか?

「どちらが上」ではなく、前提と思想が違うと考えるのが安全です。
北米は耐熱・耐炎を最優先、欧州は快適性・機能性も含めた総合バランスを重視します。

Q. ISOで世界統一されているから同じ装備でいい?

ISO規格は存在しますが、実際の運用・要求性能の主流はEN/NFPAが強く、完全統一ではありません。
活動環境に合わない装備選定は危険です。

Q. 日本で採用されやすいのは北米型?欧州型?

日本の気候(高温多湿)と活動文化(活動服の上から着る、火災以外も防火服で出る)を考えると、
現場運用としては欧州型に近い判断が合理的です。


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