世界最強消防マシン列伝【消防艇】

世界最強クラスの大型消防艇イメージ OMFD仕様 放水量重視設計 海外消防事例 救助
戦艦をモチーフにした大型消防艇のイメージ。放水砲を多数搭載したOMFD仕様。

世界最強の消防艇とは何か

放水量という一点だけで比較するなら、答えは陸上車両ではない。
その頂点に立つのは「消防艇」である。

港湾都市に配備される消防艇は、海上という無限水源を背負いながら巨大火災に対峙する存在だ。
石油コンビナート、タンカー火災、倉庫群延焼、そして高層ビル湾岸火災。陸上ポンプ車とは思想がまったく異なる。


■ 世界最大級 ― ニューヨークFDNY

世界最大級として知られるのが、FDNYの消防艇「Three Forty Three」の名前の由来は、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件(9/11)で犠牲となった343人のニューヨーク市消防局(FDNY)の消防士たちへの敬意と追悼です。

最大放水能力は約50,000ガロン毎分。
リットル換算で約190,000L/minに達する。

  • これは空港用ARFFの約10倍以上。
  • 産業火災特化型ポンプ車の数倍にあたる。

船体は約43m級。約8,000馬力の出力を持ち、自己防御放水装置も装備する。
完全に「浮かぶ消火プラント」である。

海水を無尽蔵に吸い上げ、複数モニターから同時放水。
港湾一帯を覆う規模の火災に対応できる能力を持つ。


■ ロサンゼルス・アジア諸国

ロサンゼルス消防局の大型艇は約38,000GPM、約144,000L/min。
アジアでも上海、シンガポール、釜山などに大型艇が整備されている。

つまり現在、世界の港湾消防は大型化の時代にある。


■ 日本の消防艇

日本でも大都市港湾には大型消防艇が配備されている。

  • 東京消防庁: 約40,000L/min級
  • 横浜市消防局: 約30,000L/min級
  • 神戸市: 港湾コンビナート対応型を整備

そして大阪市消防局。
私は奉職した1980年当時は大阪の大型消防艇は、就役当時「東洋一」と称された。
これは当時のアジア圏で最大級の放水能力・船体規模を誇ったためである。

放水量は約30,000〜40,000L/min級。
大阪港の石油関連施設や湾岸部高層群を想定した設計だ。

■ では大阪は今も東洋一か

現在はアジア各国にも大型艇が整備されている。
よって「現在進行形の東洋一」と断言するのは難しい。

しかし歴史的事実として、
大阪市消防局の大型消防艇が「就役当時、東洋一と称された」ことは確かである。

これは単なる宣伝文句ではない。
港湾都市大阪が大規模災害と向き合ってきた証である。

ここで重要なのは、単純な最大値ではない。


■ 消防艇の戦術思想

陸上ポンプ車は水利に依存する。消火栓、水槽車、中継送水。
しかし消防艇は海そのものを水源とする。理論上、放水継続時間は水源に制限されない。

また、海上からの放水は以下の利点がある。

  • 延焼方向の遮断
  • 岸壁火災への側面攻撃
  • 高層建築への外部冷却
  • 自己防御散水による耐熱確保

特に石油コンビナート火災では、陸上から近づけない場合がある。
その時、海上からの攻撃は決定的となる。


■ 放水量比較

区分放水量(目安)
世界最大級消防艇約190,000L/min
米国大型艇約140,000L/min
日本大型艇約40,000L/min
ARFF最大級約10,000L/min
産業ポンプ車20,000〜30,000L/min

放水量の絶対王者は消防艇である。



■ 真の最強とは何か

放水量だけなら消防艇。
機動性なら空港消防車。
長距離送水ならドラゴン・ブースト。
都市戦術なら小型高圧ポンプ車。
最強とは用途で決まる。

しかし「最大放水量」という一点で頂点に立つのは、間違いなく消防艇である。
陸から海へ。
消防マシンの進化は、まだ止まっていない。

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