人材育成マネジメントってどんな業種でも難しく完全な正解ってないですよね。
消防も同じで、指導する立場になってから私も色々試したり悩んだりしました。
皆さんも同じような経験ありませんか?
実際、いろんな方法があっていいと思いますし違う方法で成果を出している方も多くいると思います。
ここでは私ハリーが20年以上隊長としての経験から学んだ事をお伝えすることで、人材育成で悩んでいる方の一助になればと考え書いてみました。
経験を重ねて学ぶことは大事ですが、ある程度結論が出ているなら同じことをした方が時間の節約にもなり、さらにそこから独自のいい方法が見つかるはずです。
結論
教育の最大の目標は知識ではなくて行動である。
(ハーバート・スペンサー:19世紀イギリスの哲学者、社会進化論者、社会学者、倫理学者)
まさしくその通りです。
求めるのは理解もですが、行動です。
わかるとできるは違います。
そして私の結論はOJT一択です!
ただし、もちろんOFF⁻JTで基礎ができていることが条件です。
つまり土台部分はOFF⁻JTで固めその上にOJTができる環境を構築すれば新人も短期間で戦力となります。
そのまた土台に、それを実施できる評価者の技量が必要です。
それやったら一択ちゃうやん!と言われそうですが、OJTを正しく行うためのOFF⁻JTです。
スポーツでも勉強でも筋トレでも正しい方法で正しく行えば必ず成果はでます。
あまり効果がないのは、その方法が間違っている可能性があります。
OJTとOFF⁻JT
まず、簡単に用語説明します。
ビジネスの世界でも人材育成の方法としてよく使われるので、知ってる方も多いと思います。
ここでは消防の現場活動に対する教育訓練という狭い意味になりますので、他のサイトでいうところのOJTやOFF⁻JTとはちょっとちゃいます。
OJT:on the job training
実際に現場活動を行いながら知識や技術を身に付けて行く方法です。
OFF-JT:off the job training
普段業務中に行っている訓練や研修、非番日を利用して参加する訓練会や講習会などです。
人材育成にOJTが一択の理由
よくOJTとOFF⁻JTのメリット・デメリット比較がありますが、ここでも尺稼ぎを兼ねて消防の人事育成のための教育訓練の観点からみていきますね。
OJTのメリット
- どんな現場でもできる
- 決められたシナリオがない
- 訓練のための訓練ではない
- 同じシチュエーションがない
- 同時に多くのことを判断する能力が養われる
- 評価者も成長できる
- 短期間で新人のレベルアップが可能
- 個別に書きましたが、実際には全てがリンクしています
- コスト削減
OJTのデメリット
- やり直しできない
- フェーズごとに分けてできない
- 評価者の負担が大きい
- 難易度の選択は現場任せ
OFF⁻JTのメリット
- 系統だった活動ができるようになるまで反復してできる
- 簡単なシナリオから徐々にステップアップして目標までもっていける
- 経験が少ない隊員には知識と技術の紐づけの初歩としては最適
- 失敗してもやり直しができる
- フェーズごとの訓練ができる
OFF⁻JTのデメリット
- 非番日に参加する研修などはコストがかかる
- 準備が必要
- リアルさに欠ける
箇条書きにするとこんな感じになります。
では何故OJT一択かというと、実際に活動しながら学ぶことは知識と活動をリンクさせるために五感をフル活用しなければなりません。
また効果もその場で確認できるので潜在意識にすり込まれやすいです。
人間は本能的にリミッターを働かせる自衛本能があります。
極限状態ではそれを開放することで状況を好転させようとします。
いわゆる「火事場のクソ力」ってやつですが、それと同じような状況での学びは吸収力がスーパーウルトラ劇的強力です。
民間の救命士養成所や大学で救命士の勉強を3~4年かけてした後に免許を取得しても、現場を2年ほど経験して半年間だけ救急救命士養成所で学んで免許を取得した救急隊員には知識も技術も絶対にかないません。
それは意識してしているかどうかは別にして、少なからずOJTを実践しているからです。
昔からよく技術は盗めとか体で覚えろとか言われますが、それは無意識のうちにそれまでの経験からなんとなく現場での学びが一番と気が付いていたのでしょうね。
私はそこに気づくまでにはかなりの時間を費やしたので、定年までにそれを実践できる時間が必然的に少なくなっていました。
もし、これを見て「なるほど!」っと思った方が居れば一番時間がかる模索部分を割愛し実践していただければ、少しでも多くの時間を人材育成に費やせますよ~。
OJTの実際
どんな現場でも指令段階からまずスタートしますが、その前に基本的な準備が完璧に出来ていけなくてはなりません。
この準備については後述するPDCAを回すことで完成系に近づきます。
では災害出場をイメージしてみましょう。
火災でも救急でも指令された瞬間から静から動へと変わります。
- 1 指令内容から想像できる対処方法や資器材の選定など何パターンかをまずは思い浮かべる。
- 2 現場到着までに収集した新たな情報があればそれも付加して活動方針をある程度しぼり、事前に他の隊員とブリーフィングをする。
- 3 通常この場面では隊長の考えを伝達となりますが、この限られた時間の中でも各自の考えた戦術を聞き出すことでOJTを実施できます。
しかし、ここで重要なのはOJTのデメリットであるように、よく似た現場はありますが全く同じ現場が発生することは無いので評価者(小隊長)は頭の中に他の活動方法の目次だけでも書き出しておいて、想定外の場合にも対応できる準備をしておくことです。
これらは火災、救助、救急のどの様な状況の現場でも同じですので、どんな現場でも活用でき、決められたシナリオが無いので常に広い思考とそれの絞り込みをするよいOJTとなります。
想定していた状況とあまり変わらなければ、現着と同時に二手三手先読みをしているので活動に余裕ができるし、想定と違う状況でも後手に回ることはありません。
評価者(小隊長)の役割
もちろん実際の現場ですので、評価者(小隊長)は全ての責任を負わなければなりません。
状況評価を常に行い、間髪を入れず必要な時に修正もしくは即時介入を実施してます。まだコントロールできる範疇と判断した場合のみ継続させます。
活動の目的が決まれば、そこに至る過程は何通りかあります。
しかし、実際の現場では時間も重要な要素なので評価者(小隊長)は最短ルートで行くか、ある程度OJTを多めに実施するかをしっかり見極めなければなりません。
言い方を変えればそれができない、できる自信がない評価者(小隊長)は現場でOJTをやるべきではありません。
この様にOJTは評価者(小隊長)にもかなり負担がありますが、それゆえ小隊長としての能力向上のチャンスでもあります。
PDCA
PDCAも数多く回せるのでグングン実力UPします。
PDCAを回さないとせっかくのOJTの効果が半減しますので、必ずして下さいね。
前述した完璧な準備もPDCAを回せば回すほど完璧に近づきます。
まとめ
隊員の成長と共に評価者もレベルアップしていくので一石二鳥どころか最終的には全員が同じ活動ができるようになるので一石三鳥にも四鳥にもなります。
教育の最大の目標は知識ではなくて行動なんで人材育成は on the job training !
(ハリー:20世紀~21世紀の消防士)
どんなことでも同じですが正しい方法で正しくすることが一番効果があります。
私は主に救急隊で活動していましたが、この方法で多くの後輩が育ち昇任異動後は素晴らしい隊長として活躍してくれています。
また、救急隊ではない隊員も彼らの成長を見て救急隊に乗りたいと思ってくれるようになりました。
新人を一日も早く戦力化するためにはこのようにOJTは最適ですが、基礎の部分はやはりOFF⁻JTとなります。基礎の部分ができるようになるまではOJTはするべきではありません。
OFF⁻JTで学んだ知識とスキルをOJTに活用できるように誘導するのも評価者(小隊長)の手腕です。
OJTとOFF⁻JTはセットで運用することが基本で評価者(小隊長)はそれをうまく使い分けて人材育成をマネジメントしていく中で、隊員の成長と共に自身の成長も促され隊全体のレベルがあがります。
最後に
もともと優秀な隊員がもっとできるようになるより、「あいつは、あかん」と言われている隊員をいっぱしの隊員に育て上げることが、本当の人材育成だと私は思っていますしやりがいもあります。
まあ、できる連中はほっといても伸びますしね。
では、今回はここまで~!
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