目立つ消防車と言えば、真っ先に思い浮かぶのがおそらく「はしご車」ではないでしょうか?
なんかデカくて高くて、救助も放水もできる消防車のショーヘイみたいな存在ですが、今回はそんな「はしご車」の中でも世界的にトップレベルの3車種をお伝えします。
まずは、プロローグとして「はしご車」の歴史から。。。
「はしご車」の起源
「はしご車」が登場する前は高いところに上がっての活動は、普通にはしごを使って建物の屋根に登ることが一般的でした。
実際に1666年に発生したロンドン大火で木製のはしごが使用されていたとされています。また、1672年に設立されたロンドンで最初の消防団でも木製のはしごが使用されたという記録が残っています。
日本でも時代劇で町火消がはしご担いで活動しているイメージはありますね。
しかし、より高い建物が建てられるようになると従前のはしごでは対応が厳しくなってきて、「あかん、とどかんわ、もっと効率的な方法が必要やで~」ということで「はしご車」が誕生したようです。
世界初の「はしご車」が誰によって作られ、どのような形状や仕様だったのかについては明確な記録は存在していませんが、17世紀後半にはイギリスのロンドンで木製の伸縮式の手動式梯子を備えたはしご馬車が存在していたという説や、18世紀にイギリスの技術者であるRichard Newshamによって発明されたという説もあるとかないとか。。。。
とにかく産業革命を経て19世紀には、蒸気動力や内燃機関が発明されより強力な「はしご車」が開発されました。
その後は時代と共に進歩した技術に支えれらてだんだん進化していき、先端屈折はしご車や梯体(はしご)のない屈折はしご車(スノーケル車)が誕生します。
梯体がないのに「はしご車」って?感じはしますが、実際一般的なはしご車でもはしご部分を人が自力で上ったり下りたりはあまりせず、リフターやバスケットを使うのではしご代わりってことでセーフにしときます。
それでは、前置きはこのぐらいで「世界のTOPレベルはしご車3選」のご紹介へ~。
「世界のTOPレベルはしご車3選!」
- Bronto Skylift F112HLA 高さ世界一
- Magirus M68L 人間工学世界一
- MORITA MLLA(H)5-30W 汎用性世界一
Bronto Skylift F112HLA
Bronto Skylift F112HLAは、フィンランドのBronto Skylift社が製造する「屈折はしご車」で、最大高さが驚きの112m!世界で最も高くまで届く「はしご車」とされていています。
主なスペックは横方向には約30mの横方向の作業範囲(40m級は15m)、バスケット荷重500kg(同180Kg)、放水量2500L/分となっています。
40m級の先端部に乗っても怖いことはなかったですが、これはさすがにこわいわ~。
ただ、高いだけでなく屈折はしご車は伸縮式のアームで調整するので従前のはしご車よりも高層ビルや構造物に用意に接近することができ、救助活動がより迅速に行えます。
なお、Bronto Skylift社は日本が誇る消防車メーカーのモリタホールディングスの連結子会社らしいです。
残念ながら全長19m(40m級11m) 全高4m(同3.5m) 重量78t (同20t)という大きさもさることながら、そのお値段が約2,000,000,000円(40m級10台買えます)で運用コストも桁違いになりそうなんで日本での一般的な運用は厳しそうですね。
また78tという重量は、アメリカのM1エイブラムス戦車62t、日本の90式戦車50tをうわまわるスーパーヘビー級マッチョはしご車です。
もちろんオペレーションには高度な技術や訓練が必要とされていますが、海外では消防隊以外に建設業、通信業、エネルギー産業など幅広い分野で使用されています。
消防仕様ではありませんが日本で標準的な40m級と並ぶとこんな感じです。まるで40m級が軽はしご車のような錯覚に陥ります。
こんな感じで、まさしく高さに能力を全振りした「はしご車」です。
Magirus M68L
Magirus M68Lは消防車メーカーでは超有名なドイツMagirus社が製造するはしご車です。
伝統的なターンテーブル方式ですが、68mまでの伸梯が可能です。
このはしご車にはXLL VARIOジャッキングシステム(作業高が55 mを超えるターンテーブルはしご車用に特別に設計)を備えています。
これは従前の横方向に張出しシリンダーが垂直に上下するアウトリガージャッキとは違い車両の下部に取り付けられた電気式ジャッキを使用し車両の安定性を確保します。
見た目は通常のアウトリガージャッキより頼りなそうですが、車両の重心を安定させるために自動的にバランスを調整することができ斜面や不安定な地形での作業にも対応できます。
私はまだ見たことないですがこのジャッキシステムは安定性の高いさと操作の容易さから、導入している海外の消防士たちからは高く評価されているようです。
そしてリフターは、はしごの最上部から地上までストレートで降下可能です。つまり安全な地面に直接、簡単、迅速に移動できるので避難行動に支援が必要な方には使いやすく買い手(要救助者)よし、売り手(救助者)よし、世間よしの三方よしリフターです。
ヨーロッパが主戦場なのでオペレーターシートには暖房完備で、防火服をを着たままでも十分操作できる広さも確保しています。
更にオペレーターシートの傾斜角度は、はしごの角度に自動的に調整されるので頭を上げっぱなしにしなくてもよく、シートとペダルの間の距離も常に同じになるように人間工学も配慮しているのがドイツ製らしいですね。もちろん、傾斜角度は必要であれば個別に調整することも可能です。
ってことで、ドイツらしく高さだけでなく人間工学にも力を注いだ「はしご車」です。
MORITA MLLA(H)5-30W
最後は日本のモリタのフラッグシップモデルの「先端屈折式はしご車」MLLA(H)5-30W。
先端屈折式はしご車は、従来のはしご車とは異なり、はしご本体の先端を曲げることができる特殊な構造を持った車両です。例えば高層ビルのフェンスや手すりなどに囲まれた屋上での救助活動を容易にしました。
これはMagirus M68Lのリフター同様避難行動に支援が必要な要救助者にとってはものすごく重要な機能です。また、リフターとバスケットの同時使用も可能となっています。
30m級なので高さはあまりないですが、仰角のみではなく斜め下方向にはしごを伸ばす(最大18m)ことが可能でなので、川の堤防や海の防波堤から水面にいる要救助者にアプローチ可能です。
また、梯体内に独自の水路があることでホースを連結しての送水より摩擦損出が少なく放水量が2,000L/分(0.7MPa)と水路がない仕様に比べてバスケット内の筒先から倍近くの放水が可能です。
さらに制振制御装置で振動の減衰時間を約1/3にできたり、以前は7度だった最大傾斜矯正角度が11度と制限された空間でも作業がしやすくなっています。
以上の様に他とは圧倒的に違う特徴は無いですが、現場重視で救助される側と救助する側にとって非常に使いやすい「はしご車」に仕上がっています
こんな感じで、まさしく日本メーカーらしくオールラウンダーな「はしご車」に仕上がっています。
まとめ
世界には、まだまだ他にもすごい「はしご車」は存在します。
ネット上では中国で400mまで放水可能なはしご車が間もなく完成!と2010年の記事にあります。(その後の報道はないのでいまだにBronto Skylift F112HLAが世界一の高さだとは思います)
しかし、最大到達高さや他の目を引くような斬新な機能も使いこなしてなんぼです。カタログスペックや仕様書はあくまでも目安にしかすぎません。
実際の現場で使用する頻度は非常に少ない特殊車両なので日頃の訓練は当たり前ですが、所属や消防学校、管内の企業などのいつも同じ場所での訓練では現場で生かされる知恵は限られてきます。
現在は世界中の情報が簡単にネットで入手できるので、はしご車並みにアンテナを高くして現場での活用方法を研究して、それを訓練で検証して現場で生かすことが重要となってきます。
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