救急車がご近所に停まってから患者さんを乗せても長い間動かないってよくありますよね。
何しとんねん!はよ運ばな救急車呼んだ意味が無いがな~っと思いますが、実は病院選定までには結構手順があります。
家族等からかかりつけ病院に連絡が済んでいて、そのかかりつけ病院が受入れOKなら救急隊からも病状など追加情報を連絡して対応可能確認をするだけなのでさほど時間は要しません。
そうでない場合は病院選定に結構時間を要する場合があります。
てなわけで、今回は救急隊が搬送先決定するまでの流れを説明します。
長くなりそうなので何回かに分けて書きますが、今回は受入れ先の医療機関についてです。
まず搬送先の選定については消防法第35条の5で、傷病者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基準は各都道府県が作り、傷病者の搬送及び医療機関による当該傷病者の受入れの迅速かつ適切な実施を図るとあります。
大阪府の例で見ていきます。
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/3071/00382009/20201218.pdf
大阪府では「傷病者の搬送及び受入れの実施基準」で受入側の病院について次のように決められています。
分類基準原則
ここでは緊急度・病態に応じた処置が可能な医療機関に迅速・適切に搬送するために医療機関をまずは大分類して3つに分けています。
大分類
3つの区分はざっくり言うと
「赤1」 緊急度高、救命処置要⇒とにかく救命最優先!
「赤2」 緊急度高、救命処置要の時もあるが病態を類推する時間的余裕あり⇒危機的な状況は間違いないけど病態の推測も併せて実行できる状態
「黄以下」上記以外⇒一般の救急
この分類に専門的な処置を必要とする特定病態に対応可能か、病態が特定できない場合でも対応可能かでも分類していてここまでが大分類。
う~ん、よくわかりませんよね。。。。ちょっと分解してみます。
とりあえず緊急度で3つに分類して
その各分類内で特定病態に対応可能か、特定できない場合でも対応可能(非特定)かで区分して
*特定病態⇒迅速に専門的な治療又は処置を必要とする診療機能。例えば、脳梗塞に対するt-PA 療法が該当、必然的に黄以下は非特定病態となります。
最後に各色の各病態に医療機関カテゴリーを振分けて大分類の完成です。
やっぱり救命救急センターは患者を選ばないってよくわかりますね。
大阪府の「傷病者の搬送及び受入れの実施基準」の中ではこんな表になってます。
医療機関カテゴリー
これも文言を追うとややこしいのでイメージしやすいようにざっくりいきます。
- 救命救急センター・小児救命救急センター⇒危機的な傷病者ならやっぱここ、救急医療の大谷翔平
- 特定機能対応医療機関⇒緊急に専門的な処置を要する特定病態に対応可能
- 重症初期対応医療機関⇒赤1or赤2で、特定病態でない外傷を含む傷病者や心肺停止対応可能
- 重症小児対応医療機関⇒小児の赤1or赤2対応可能、軽症外傷も小児の外傷はあまり診てくれるとこないのでOK
- 初期対応医療機関⇒その他傷病者の初期診療対応、地域性考慮
中分類~小分類
特定病態をそれぞれの病態別に分類したものが中分類となり、具体的な病院の機能まで落し込んだものが小分類となります。
この機能を有した病院が「特定機能対応医療機関」になります。
大阪府のHPではここまでを概念図として次の様に表しています。
分解した図を組合わせるとこうなります。(拡大して見てください)
見にくいですが、横見て縦見ると該当医療機関カテゴリーがわかります。
そして、各医療圏ごとに該当する病院を振り分けて医療機関分類の完成となります。
本来なら観察結果より赤1または赤2になるような脳卒中や循環器疾患も、この分類により救命救急センターに集中することなく対応可能な特定機能対応医療機関も候補としてあがる仕組みです。
医療機関分類完成図
大阪府の医療圏は豊能、三島、北河内、中河内、南河内、堺市、泉州、大阪市です。
大阪市はさらに東西南北でブロックを分けて振り分けていますが、上の表を北ブロックを例に作成したものがこれです。
さらに見にくくなりましたので、これも拡大見必須です。
と、まあこんな感じで初期対応医療機関などもすべて大阪市内東西南北のブロック別に救急告示医療機関リストが作成されています。
これだけあればすんなり搬送先も決定!
のはずですが。。。。
実情
はずなんですが、救急告示医療機関とはいうものの常に対応可能ではなく、傷病者の搬送及び受入れの実施基準に注意書きで「手術中その他事情により、傷病者の受け入れができない場合があります」と記載されています。
手術中は仕方ないとしても「その他の事情」がムッチャ多いです。特に深夜の消化管出血や趾指切断は「その他の事情」で非常に厳しい状況です。
ここまでが、受入側の基準です。このややこしい一覧表を救急隊員はしっかり頭に入れて。。。は無理なので、緊急度と病態の組合せで大体のパターンで覚えるって感じです。
実際には、ORION(Osaka emergency information Research Intelligent Operation Network system)というシステムが各隊のスマートフォンにアプリとして存在し、観察結果から自動的に緊急度判定や直近順に対応可能な病院をリストアップしてくれます。
次回はそのORIONやそれを使用した救急隊側のステップをお伝えしますね。
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